ロクリヌス

ロクリヌスは、12世紀の年代記編纂者ジェフリー・オブ・モンマスの『ブリタニア列王史』に語られる、伝説的なブリトン人の王です。彼は紀元前1125年に権力を握ったとされています。

『ブリタニア列王史』におけるロクリヌス

ロクリヌスは、トロイのブルータスとインノゲンの長男であり、アイネイアースにつながるトロイア人の子孫でした。ブルータスの死後、ブリテン島は3人の息子によって分割され、ロクリヌスはデヴォンとコーンウォールを除く現在のイングランドとほぼ同等の領土を受け継ぎました。アルバナクトゥスはスコットランド（アルバニー）を、カンバーはウェールズ（キムル）をそれぞれ統治しました。ロクリヌスは、自身の名から取られた「ロエグリア」と呼ばれる地域を支配しました。彼の治世は10年間続き、そのほとんどは平和でした。

しかし、平穏な日々は長くは続きませんでした。弟アルバナクトゥスがフン族のハンバー（フン族）に殺害されると、ロクリヌスは復讐を決意します。もう一人の弟カンバーと協力し、ハンバーと戦い、彼を溺死させました。この戦いの後、その川はハンバー川と呼ばれるようになったと伝えられています。ロクリヌスは戦利品を同盟者たちと分け合い、フン族の船で見つかった金銀のみを自分のものにしました。さらに、フン族に捕らえられていたゲルマン人の王女エストリルディスを連れ帰りました。

この行動が、ロクリヌスとコリネウスの娘である女王グウェンドリンとの結婚を仲介した父ブルータスの同盟者コリネウスの怒りを買います。ロクリヌスはグウェンドリンに服従し結婚したものの、エストリルディスへの愛を捨てきれず、彼女を7年間トリノヴァントゥム（ロンドン）下の洞窟に秘密裏に閉じ込めていました。

ロクリヌスはエストリルディスとの間に娘ハブレンを、グウェンドリンとの間に息子マッダンをもうけました。マッダンが生まれるとすぐに、彼は祖父であるコリネウスのもとへ送られました。コリネウスが亡くなると、ロクリヌスはついにグウェンドリンを追放し、エストリルディスを王女として迎え入れました。しかし、グウェンドリンはコーンウォールへ逃れ、ロクリヌスへの復讐のために軍を編成しました。2つの軍はストア川の近くで激突し、ロクリヌスはそこで殺害されました。彼の死後、妻のグウェンドリンが女王としてブリテンを統治しました。

後の伝統

13世紀の散文『マーリン』では、ロクリヌスはログリンと呼ばれ、ブルータスの死後長い時間を経てブリテンに到着したとされています。彼はロンドンの街を修繕し、塔と強固な壁を建設させ、その都市を「ニュートロイ」から「ログレス」へと改名したとされています。この名前はアーサー王の死後まで呼ばれ続けました。

ロクリヌスは、エリザベス朝の劇『ロークラインの悲劇』（作者不詳）の題材にもなっています。この劇は1595年に「W.S.によって新たに発表、監修、修正された」ものとして出版され、後に『シェイクスピア外典』に収録されました。

ロクリヌスの物語は、愛、復讐、そして権力闘争が複雑に絡み合った、伝説的なブリトン人の歴史を彩る重要な要素の一つと言えるでしょう。

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