ロンドン交響曲 (ヴォーン・ウィリアムズ)

レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ（Ralph Vaughan Williams）の《ロンドン交響曲》（A London Symphony）は、1912年から1913年にかけて作曲された、彼の番号付き交響曲としては2作目にあたる作品です。しばしば《交響曲第2番》とも称されます。

楽曲概要と作曲・改訂の経緯

この交響曲は1914年3月27日、ロンドンのクイーンズ・ホールにおいて、ジェフリー・トイの指揮で初演されました。初演は成功を収めましたが、第一次世界大戦の開戦が迫る緊迫した時期に、ドイツの指揮者フリッツ・ブッシュに送付された初稿の総譜が紛失するという予期せぬ事態が発生しました。作曲者は手元に残っていたパート譜を頼りに、また作曲当時から彼の創作活動を支えていた親友ジョージ・バターワースの協力を得ながら、総譜を再構築することに成功しました。この再構築された版には若干の改訂が加えられ、1915年から1918年にかけての演奏に用いられました。

その後もヴォーン・ウィリアムズは長年にわたり、この作品に細かな改訂を加え続けました。最初の出版譜（初版）は1928年に刊行されましたが、作曲者が納得する最終決定版が完成したのは、さらに後の1936年頃のこととされています。この交響曲は、第一次世界大戦で戦死した友人、ジョージ・バターワースに捧げられています。

楽器編成

この作品は以下の編成で演奏されます。

木管楽器:
フルート3（うち1はピッコロ持ち替え）
オーボエ2
イングリッシュホルン1
クラリネット2
バスクラリネット1
ファゴット2
コントラファゴット1
金管楽器:
ホルン4
トランペット2
コルネット2
トロンボーン3
チューバ1
打楽器、その他:
ティンパニ
シンバル
トライアングル
大太鼓
小太鼓
銅鑼2
グロッケンシュピール
鈴
ハープ（可能であれば2台）
弦楽器:
第1ヴァイオリン
第2ヴァイオリン
ヴィオラ
チェロ
コントラバス

楽曲構成

交響曲は伝統的な4つの楽章で構成されています。

1. Lento - allegro risoluto
2. Lento
3. Scherzo (Nocturne) Allegro vivace
4. Finale: Andante con moto - maestoso alla marcia (quasi lento) - allegro - maestoso alla marcia - Epilogue: Andante sostenuto

題名に関する作曲家の見解

「ロンドン交響曲」という題名について、ヴォーン・ウィリアムズ自身は興味深い考えを示しています。彼は、この題名が標題音楽であることを示唆する可能性や、実際にウェストミンスターの鐘のようなロンドンの特徴的な響きが含まれていることを認めつつも、あくまでこの作品を絶対音楽として作曲した意図があったと述べています。そのため、彼は「ロンドンっ子による交響曲」と呼ぶ方が、自身の創作意図にはより近かったかもしれないと感じていたようです。しかしながら、1920年の演奏会においては、指揮者アルバート・コーツのために詳細な楽曲解説の作成を許可しており、ロンドンの情景を想起させる要素が存在することもまた事実です。

この作品は広く「交響曲第2番」として認識されていますが、ヴォーン・ウィリアムズは晩年に番号付けを導入するまで、初期の交響曲を特定の題名で区別していました。番号を振るようになったのは第4交響曲以降ですが、「海の交響曲」「ロンドン交響曲」「田園交響曲」といった初期の3作品は、その個性的な題名と共に、番号でも親しまれています。

初稿について

紛失したと考えられていた1914年の初稿のパート譜は、作曲者の未亡人であるアーシュラ夫人が特定の録音プロジェクトのために提供したことにより、2000年にシャンドス・レーベルからリリースされたリチャード・ヒコックス指揮ロンドン交響楽団による録音を通じて、初めて一般の音楽愛好家が聴くことが可能となりました。このパート譜は録音のためだけに提供された経緯があり、近い将来に演奏会で初稿が実演される可能性は低いとされています。1936年の決定稿は、度重なる改訂を経て構成がより引き締まり、全体として完成度が高いと評価されていますが、初稿にも独自の魅力を持つパッセージがいくつか存在することが知られています。

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