ヴァージン・オービット

ヴァージン・オービット：空中発射ロケットの先駆者とその終焉

ヴァージン・オービット社は、ヴァージン・グループ傘下の宇宙開発企業として、小型人工衛星の打ち上げサービスを提供していました。同社は、独自の空中発射システムを用いた革新的なアプローチで、宇宙開発業界に大きな注目を集めました。しかし、2023年、同社は経営破綻という結末を迎えることとなります。その軌跡と破綻に至るまでの経緯を詳しく見ていきましょう。

設立と技術革新

2017年、ヴァージン・ギャラクティックから分社化されたヴァージン・オービット社は、ボーイング747-400を改造した「コズミックガール」という母機から、ランチャーワンという小型ロケットを空中発射するという画期的なシステムを開発しました。このシステムは、地上からの発射と比較して、発射場所の制約が少なく、より柔軟な運用を可能にしました。

ランチャーワンは、高度約1万2千メートルまで上昇したコズミックガールから分離後、自力でエンジンを点火し、軌道へ人工衛星を投入します。この技術は、小型衛星の打ち上げコストを大幅に削減する可能性を秘めており、多くの企業や研究機関からの注目を集めました。2021年には、ランチャーワンの初打ち上げが成功し、その後も数回の打ち上げを成功させました。2021年末には、SPAC（特別買収目的会社）によるNASDAQ上場を果たすなど、順風満帆な時期もありました。

事業停止と倒産

しかし、2023年1月、ランチャーワンの打ち上げに失敗。これがきっかけとなり、資金繰りに窮する状況に陥りました。同年3月には事業の一時停止と大規模な人員削減を余儀なくされ、最終的には4月4日、連邦倒産法第11章の適用を申請し、経営破綻に至りました。 資産は競売にかけられ、ロケット・ラボやストラトローンチ・システムズなどの企業に売却されました。

コズミックガールとランチャーワン

コズミックガールは、元々はヴァージン・アトランティック航空で旅客機として運用されていたボーイング747-400を改造した機体です。ランチャーワンを搭載するために、機体への改造が施されました。ランチャーワンは、最大400kgの衛星を太陽同期軌道に投入できる能力を有し、低コストでの打ち上げを目標としていました。

VOX Spaceと軍需市場

ヴァージン・オービット社の子会社であるVOX Spaceは、アメリカ軍向けの打ち上げサービスを提供していました。国家安全保障関連の打ち上げ市場に参入し、ランチャーワンを用いて複数のCubeSatの打ち上げ契約を獲得していましたが、親会社の破綻により、その事業も継続困難となりました。

日本での展開と計画

ヴァージン・オービット社は、日本における宇宙開発にも関与していました。2020年には大分県と提携し、大分空港を人工衛星打ち上げ拠点として利用する計画を発表しました。また、日本のQPS研究所とは小型SAR衛星の打ち上げ契約を締結していましたが、親会社の破綻により、これらの計画は頓挫しました。

まとめ

ヴァージン・オービット社の破綻は、宇宙開発業界に衝撃を与えました。革新的な技術と柔軟な打ち上げシステムを有していたにもかかわらず、資金調達における課題や市場競争の激化などが、その破綻の要因として考えられます。同社の技術や経験は、他の企業に引き継がれる可能性もありますが、その破綻は、宇宙開発におけるリスクと持続可能性について改めて考えさせる出来事となりました。 今後の宇宙開発において、技術開発だけでなく、財務基盤の安定性や市場の動向への対応がますます重要になってくるでしょう。

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