一宇治城

一宇治城（いちうじじょう）

一宇治城は、鹿児島県日置市伊集院町大田に位置する中世の山城です。標高144mの城山という自然の地形を利用して築かれ、大小30を超える曲輪（くるわ）で構成されています。この城は、その歴史の中で、地域の有力豪族から戦国大名まで、さまざまな勢力の拠点として利用されてきました。

歴史

一宇治城の始まりは鎌倉時代に遡り、伊集院氏によって築城されたと伝えられています。伊集院氏は、本家筋にあたる島津氏を凌ぐほどの勢力を持つようになり、その権力を背景に城は拡張されました。しかし、1450年（宝徳2年）に島津忠国によって伊集院一族が追放され、城は島津氏の支配下に入ります。

1545年（天文14年）、島津忠良・貴久親子は、薩摩国統一を目指す上で、伊作城（いざくじょう）から薩摩国の中央部に位置するこの城に拠点を移しました。島津貴久は、北郷氏や樺山氏といった有力な分家の支持を得て、この城を拠点に薩摩・大隅・日向の3ヶ国の太守となり、島津家を統一するという悲願を達成します。

1550年（天文19年）には、島津氏の宗家当主となった貴久が拠点を鹿児島の内城に移したことで、一宇治城は地頭の管轄下に置かれることになります。初代地頭には島津孝久が任命され、その後、町田久倍などが地頭を務めました。江戸時代には、薩摩藩の重要な外城として機能しましたが、慶長以降は日常的な整備や管理が行われなくなり、実質的には廃城になったと考えられています。

特筆すべき点として、1549年（天文18年）には、島津貴久とフランシスコ・ザビエルがこの城で会見し、日本で初めてキリスト教の布教が正式に許可された場所としても知られています。また、島津義弘が息子の家久による鹿児島城築城に反対し、この城を推薦していたという逸話も残っています。

構造

一宇治城は、山全体を巧みに利用して築かれた山城であり、その縄張りは、独立性の高い複数の曲輪で構成されています。主な曲輪としては、「神明城」「伊作城」「中尾曲輪」「釣瓶城」「弓場城」「護摩所」「南之城」「上平城」などがあります。特に本丸にあたる「神明城」を中心に、土塁を再構築した跡が見られ、防御機能が強化されていたことが伺えます。このような曲輪の配置は、近畿地方に見られる近世城郭とは異なる特徴を持っています。

現状

現在、一宇治城跡は「城山公園」として整備されており、市民の憩いの場となっています。整備に伴い、遺構の一部は破壊されたり、遊具が設置されたりしていますが、比較的良好な状態で保存されています。ただし、説明板は少ないのが現状です。

JR九州鹿児島本線伊集院駅から約700mの距離にあり、アクセスも比較的容易です。南九州の中世城郭としては見学しやすい城の一つと言えるでしょう。

「神明城」跡には、フランシスコ・ザビエルとの会見を記念する石碑が建てられており、伊集院駅前には島津義弘の銅像が立っています。

参考資料

木島孝之『城郭の縄張り構造と大名権力』 九州大学出版会 ISBN 487378672X

外部リンク

一宇治城 - ウェイバックマシン（2019年1月1日アーカイブ分） 「ちえぞー！城行こまい」の紹介、一宇治城の現状の地図が掲載されています。
* 一宇治城 「川元パパのホームページ」の紹介、一宇治城の曲輪図が掲載されています。

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