三上晴子

三上晴子（みかみ せいこ、1961年1月8日 - 2015年1月2日）は、日本の美術家であり、多摩美術大学美術学部情報デザイン学科メディア芸術コースの教授を務めました。

生涯とキャリア

1961年、静岡県に生まれた三上晴子は、高校卒業後に上京し、カセット・マガジン『TRA』の編集に携わる傍ら、アートに関する評論活動も行っていました。1984年からは、鉄くずやコンクリート片といった廃棄物を素材にしたオブジェを用いたパフォーマンスを開始し、その斬新な表現は注目を集めました。原宿ピテカントロプスでの「ナムジュン・パイクをめぐる6人のパフォーマー」では、ナム=ジュン・パイク、坂本龍一、細野晴臣、立花ハジメらと共にパフォーマンスを行い、その才能を広く知らしめました。

1985年には、サッポロビール恵比寿工場跡地で初の個展「滅ビノ新造形」を開催しました。この展覧会は、『朝日ジャーナル』の連載「筑紫哲也の若者探検　新人類の旗手たち」で紹介され、三上晴子の名が社会的に認知されるきっかけとなりました。

1986年、飴屋法水が主宰する劇団「東京グランギニョル」の最終公演「ワルプルギス」で舞台装置を担当。同年には「BAD ART FOR BAD PEOPLE」を、1988年には「Brain Technology」といった展覧会で、神経や脳を思わせるケーブルやコンピュータの電子基板を用いたオブジェやインスタレーションを発表しました。これらの作品は、彼女の独特な世界観を表現し、観る者に強い印象を与えました。

1990年代に入ると、三上晴子は戦争や情報といった、生体を超えるネットワークへの関心を深め、それまで用いていたジャンクのモチーフと組み合わせた作品を制作するようになります。1990年には「Information Weapon」と題した展示を複数箇所で開催し、その問題意識を表明しました。

1991年に渡米し、1995年にはニューヨーク工科大学大学院情報科学研究科コンピュータ・サイエンス専攻を修了しました。2000年までニューヨークを拠点に活動し、欧米のギャラリーやミロ美術館、ナント美術館などの現代美術館、そしてトランス・メディアーレ、DEAF、アルス・エレクトロニカといった国際的なメディアアート・フェスティバルで作品を発表しました。

国内での活動

1992年には、NICAF92でレントゲン藝術研究所のブースで展示を行いました。1993年には、個展「被膜世界:廃棄物処理容器」や、福田美蘭との二人展「ICONOCLASM」を開催。これらの展覧会を通じて、彼女の作品は国内でも広く注目を集めるようになりました。

1996年、キヤノン・アートラボにてコンピュータサイエンスを学ぶ中で、三上晴子の関心は不可視の情報と身体の関係へと移りました。90年代半ばからは、知覚によるインターフェイスを中心としたインタラクティヴな作品を手がけるようになり、視線入力による作品「Molecular Informatics: Morphogenic Substance via　Eye Tracking」を発表しました。1997年には、聴覚と身体内音による作品「存在、皮膜、分断された身体」をNTTインターコミュニケーション・センターに常設展示しました。

2000年には多摩美術大学情報デザイン学科に着任し、教育者としても活躍しました。2004年には、山口情報芸術センターにて市川創太との共同制作による新作インスタレーション展「gravicells―重力と抵抗」を開催し、2010年には「Desire of Codes―欲望のコード」で文化庁メディア芸術祭アート部門優秀賞を受賞しました。

2015年1月2日、三上晴子は癌のため逝去しました。享年53歳でした。彼女の作品は、ジャンクとテクノロジーを融合させた独特の表現で、メディアアートの世界に大きな影響を与え、その革新的な作品は今もなお多くの人々を魅了し続けています。

受賞歴

2010年：第16回文化庁メディア芸術祭アート部門優秀賞

参考文献

椹木野衣「追悼・三上晴子―彼女はメディア・アーティストだったか」（ウェブマガジン『ART　iT』）
* 馬定延、渡邉朋也編著『SEIKO MIKAMI 三上晴子 記録と記憶』、2019年、NTT出版、ISBN：475716078X

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