三井親和

三井親和（みつい しんな）

三井親和は、元禄13年（1700年）に生まれ、天明2年3月7日（1782年4月19日）に没した、江戸時代中期の書家・篆刻家です。字は孺郷（じゅきょう）、号を竜湖（りゅうこ）、深川漁夫（ふかがわぎょふ）、万玉亭（まんぎょくてい）などと称しました。通称は孫兵衛（まごひょうえ）です。信濃国諏訪藩主であった諏訪忠晴（すわ ただはる）の弟で、旗本諏訪盛條（すわ もりつね）の家臣、三井孫四郎之親（みつい まごしろう ゆきちか）の子として生まれました。深川に住んでいたことから、深川親和とも呼ばれました。

略伝

親和は最初、禅僧である東湖（とうこ）に書道を学びました。正徳元年（1711年）には、細井広沢（ほそい こうたく）に師事し、書と篆刻の道に進みました。細井広沢の没後、関思恭（せき しきょう）、松下烏石（まつした うせき）、平林惇信（ひらばやし あつのぶ）と共に、細井門下の「四天王」と並び称されるようになりました。寺社の扁額や祭礼の幟、商家の暖簾など、依頼に応じて数多くの揮毫を行いました。安永・天明の頃には、親和の篆書や草書を反物に染め出した「親和染」が好事家の間で流行しました。また、印譜なども多く収蔵しており、「親和は広沢の深遠な刀法をただ一人受け継いだ」と評されました。しかし、実際には正しい篆法を学んでいないため、書体の用法に誤りが多いという指摘もあります。

兄の喜左衛門（きざえもん）が仕えていた高崎藩主で、当時老中に昇り詰めていた松平輝高（まつだいら てるたか）に気に入られ、深川に地屋敷を与えられました。旗本や御家人の子息がこぞって入門し、多くの門人を集め、馬術や弓術の指南と書を教えました。

親和は50歳過ぎまで妻帯しませんでしたが、人に勧められて40過ぎの農家の女性を妻に迎えました。しかし、子供ができなかったため、妻の勧めで20歳ほどの女性を妾とし、三人の子をもうけました。一説には、親和の妻は松平輝高の臣下の娘であるとも言われています。

享年83歳。門下からは、林述斎（はやし じゅっさい）や亀田鵬斎（かめだ ぼうさい）などの著名な人物が輩出されました。子の親孝（ちかたか）も書家となりましたが、大成することはありませんでした。甥の三井之孝（みつい ゆきたか）による肖像画が現在に伝わっています。

参考文献

中井敬所「日本印人伝」『日本の篆刻』 中田勇次郎編 二玄社、1966年。
森銑三「三井親和」、 中央公論社<森銑三著作集 第4巻 人物篇>
小松雅雄『江戸に旋風三井親和の書』信濃毎日新聞社、2004年。

関連項目

日本の篆刻家一覧

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