三善清行

三善清行（みよし の きよゆき/きよつら）は、平安時代前期に活躍した公卿であり、卓越した漢学者としても知られています。淡路守であった三善氏吉を父に持ち、その生涯を通じて、正義感と強い信念を貫いた人物として歴史に名を刻んでいます。官位は従四位上にまで昇進しましたが、その権威に屈しない姿勢が、官位の昇進を遅らせる要因になったとも言われています。

学問と官僚としてのキャリア

三善清行は、若い頃から学問に励み、巨勢文雄に師事しました。大学寮で紀伝道を修め、文章生、文章得業生を経て、元慶5年（881年）に対策を受験しましたが、不合格となります。この時、試験官であった問頭博士が菅原道真であり、後に清行は道真と政治的な対立を深めていくことになります。また、紀長谷雄ら歴代の文章博士との激しい論争でもその名を知られています。元慶7年（883年）に再度試験を受け合格し、翌年には大学少允に任官され、官僚としてのキャリアをスタートさせました。

仁和2年（886年）には少内記に任じられ、翌年には従五位下・大内記に叙任され、光孝朝から醍醐朝初期にかけて内記を務めました。仁和4年（888年）の阿衡事件では、藤原佐世、紀長谷雄らとともに、橘広相の説を批判する見解を示しました。寛平5年（893年）には備中介として地方官を務め、この経験を通して地方社会の実情を深く理解し、政治の生きた理念を学びました。

政治的活動と晩年

昌泰3年（900年）に文章博士に任ぜられます。この頃、宇多天皇の寵愛を受けていたものの、左大臣・藤原時平と対立し、朝廷内で孤立を深めていた右大臣・菅原道真に対し、清行は引退を勧告する書簡を送りました。しかし、道真は長年の確執からこれを拒絶しました。昌泰4年（901年）に昌泰の変が発生し、道真が大宰府に左遷されるという事態が発生します。この際、清行は時平に対し、道真の関係者全員を処罰対象とすることに反対し、処分範囲を道真の親族と宇多上皇の側近に限定させたとされています。また、道真の嫡男・高視の失脚後、清行がその後任として大学頭に就任したことから、この政変に関与していたとの指摘もあります。

延喜3年（903年）には式部少輔を兼任し、三職兼帯の栄誉に浴しました。また、陰陽天文にも明るく、昌泰4年（901年）が讖緯説における辛酉革命の年に当たると指摘し、「延喜」への改元を提唱しました。その後も、延喜5年（905年）より藤原時平らとともに『延喜格式』の編纂に参加するなど、文人として昇進を続けました。延喜14年（914年）には、朝廷からの求めに応じて『意見封事十二箇条』を上奏し、備中介としての経験を踏まえ、律令制の現状を分析し、地方政治や官人、学生の処遇改善を訴えましたが、朝廷は国政改革に消極的であったため、その意見の多くは採用されませんでした。

延喜17年（917年）に参議兼宮内卿に任ぜられ、公卿の仲間入りを果たしました。延喜18年（918年）に72歳で亡くなり、最終官位は参議宮内卿従四位上でした。

人物と業績

三善清行は、漢詩文に優れ、主著として『円珍和尚伝』、『藤原保則伝』、『意見封事十二ヶ条』などを残しています。また、奇談を集めた『善家秘記』も知られています。その生涯を通じて、学問と政治の両面で優れた才能を発揮し、平安時代の社会に大きな影響を与えた人物の一人として、後世に語り継がれています。

官歴

貞観15年（873年）：文章生
貞観16年（874年）：文章得業生
貞観19年（877年）：越前権少目
元慶4年（880年）：播磨権少目
元慶5年（881年）：対策（不第）
元慶7年（883年）：改判（丁第）
元慶8年（884年）：大学少允
仁和2年（886年）：少内記
仁和3年（887年）：従五位下、大内記
寛平3年（891年）：肥後介
寛平5年（893年）：備中介
寛平8年（896年）：従五位上
昌泰3年（900年）：兼刑部大輔、兼文章博士
昌泰4年（901年）：兼伊勢権介、兼大学頭
延喜2年（902年）：正五位下
延喜3年（903年）：兼式部少輔
延喜4年（904年）：従四位下
延喜5年（905年）：式部権大輔兼備中権守
延喜6年（906年）：兼備中守
延喜14年（914年）：式部大輔
延喜15年（915年）：従四位上
延喜17年（917年）：参議、兼宮内卿
* 延喜18年（918年）：兼播磨権守、卒去

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