三角港

三角港：歴史と文化が織りなす、日本の近代化遺産

熊本県宇城市三角町に位置する三角港は、西港と東港からなる港湾施設です。熊本県が管理するこの港は、港湾法上の重要港湾、港則法上の特定港に指定されており、日本の近代化を語る上で重要な役割を担っています。特に西港は、世界遺産「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産として、その歴史的価値を世界的に認められています。

西港：明治の三大築港の一つ

三角港の歴史は、1884年（明治17年）に西港の整備が始まったことに遡ります。1887年（明治20年）の開港は、近代的港湾としては日本最古級であり、宮城県の野蒜築港、福井県の三国港とともに「明治の三大築港」の一つに数えられています。

当初、貿易港建設の候補地として検討されていたのは熊本市近郊の百貫港でしたが、オランダ人水理工師ローウェンホルスト・ムルドルによる調査の結果、宇土半島先端の現在の西港の方が優れた天然の良港であると判断されました。ムルドルの設計指導の下、3年かけて築港された西港は、町全体に海水を導入するための石積み水路（地元では水道と呼ばれた）も整備されました。この水路により町は三区に分けられ、石積み構造の埠頭や排水河川、橋などが建設され、海沿いには海運倉庫、背後には洋風の旅館などが立ち並ぶ活気ある街並みが形成されました。

西港には、裁判所、商船学校、水産試験場、警察署長官舎などの公共施設も置かれ、昭和初期には桜並木が美しい景観を創出していました。しかし、敷地の拡張が困難だったことや、東港の整備、九州鉄道三角線の開通（1899年）などにより、次第に物流や人口は東港へと移り、西港は衰退していきました。

東港：現代の港湾機能

東港は、西港の機能を補完する形で整備が進められ、三角港の中心的な役割を担うようになりました。1951年（昭和26年）には重要港湾に指定され、1964年（昭和39年）には三角と島原を結ぶフェリー航路が開設されるなど、港湾機能は充実していきました。しかし、天草五橋の開通（1966年）や他の港湾の整備により、人流・物流は分散し、島原航路は2006年に廃止されました。現在では、御所浦港への航路と、本渡港、前島を経由する高速船「天草宝島ライン」が運行されています。

西港の保存と観光

東港への機能移転により、西港は当時の石積みの埠頭や水路、橋などがほぼ原形のまま残る、全国でも稀な港湾史跡となっています。そのため、1987年には港湾整備事業の指定を受け、現在も熊本県と宇城市が協力して、港湾遺跡の保存や建造物の復元を進めています。2001年には土木学会選奨土木遺産、2002年には国の重要文化財に指定され、2015年には世界遺産に登録されました。また、三角浦の文化的景観としても高く評価されています。

周辺の観光資源

西港周辺には、明治時代に建てられた擬洋風建築の九州海技学院（現在は民間企業の施設）、かつての簡易[[裁判所]]を改修した法の館、小泉八雲が滞在した浦島屋（一部復元）など、歴史的建造物が数多く残っています。これらの建造物は、当時の西港の賑わいを感じさせる貴重な観光資源となっています。また、東港周辺には三角駅やフェリーターミナルがあり、現代の港湾機能も体感できます。

三角港は、歴史的遺産と現代の港湾機能が共存する、他に類を見ない魅力的な場所です。訪れる際には、歴史的な建造物だけでなく、天草諸島を望む美しい景色にも注目してみてください。 歴史と自然、そして現代が融合した三角港で、忘れられない旅の思い出を作ってください。

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