三遊亭小圓朝
落語家が代々名乗る「三遊亭小圓朝」は、長い歴史を持つ名跡です。四代目の逝去に伴い、現在は後継者が不在となり、空き名跡となっています。
初代とされる人物は、後に三遊一朝を名乗った噺家です。かつては芳村忠次郎を初代とする考えもありましたが、現代ではこの三遊一朝を初代と数えるのが一般的となっています。
二代目を名乗ったのは、芳村忠次郎（1858年 - 1923年）です。彼は二代目三遊亭圓生の門人であった三遊亭圓流を父に持ちました。幼い頃から落語の世界に身を置き、8歳で初代三遊亭圓馬の門下に入り圓平と名乗って高座に上がります。一時は六代目桂文治の門で桂文之助を称した時期もあるようです。15歳で父の弟弟子にあたる三遊亭圓朝の門下に入り朝松となります。3年間の前座修業を経て18歳で三代目橘家小圓太を襲名。圓朝や四代目圓生も名乗った由緒ある名跡を受け継ぎ、将来を嘱望されましたが、女性問題や借金で大きな失敗を犯し、師匠から破門寸前まで追い詰められます。このため、一時的に地方を巡業して回るドサ廻りの生活を送りました。25歳で東京に戻り、師匠圓朝に深く謝罪して三遊亭圓花として再出発を果たします。1885年には元の小圓太に戻り、1893年頃には初代三遊亭金馬に改名して真打に昇進しました。この「金馬」という名はそれまで「立川金馬」として受け継がれてきましたが、彼が初めて三遊亭の亭号を名乗ったため「初代三遊亭金馬」とされています。1903年8月に三遊亭圓馬に改名しますが、大阪に同名の圓馬が存在したため苦情が入り、1905年1月に三遊亭小圓朝と改めることとなりました。同年には、第一次落語研究会の発足にも参加しています。病により1922年に中風で倒れますが一度は回復。しかし静岡での巡業中に再発し、東京へ戻ったもののすぐに亡くなりました。享年67歳。父は三遊亭圓麗、実子は三代目三遊亭小圓朝です。得意ネタは師匠圓朝譲りのものが多く、『牡丹灯籠』『安中草三』『世辞屋』『女の子別れ』『星野屋』などがあります。多くの弟子を育て、五代目古今亭志ん生も二代目小圓朝門下でキャリアをスタートさせています。NHKのドラマ「いだてん」では八十田勇一が演じました。
三代目は芳村幸太郎（1892年 - 1973年）。二代目の実子にあたり、祖父も圓麗という落語一家の出身です。しかし、当初は落語に興味がなかったといいます。高等小学校卒業後、1907年2月に父である二代目の門下に入り朝松として噺家の道へ。2、3年で二ツ目に昇進して小圓治と改名し、父とのドサ廻りも経験しました。1917年2月に真打へ昇進し二代目橘家圓之助を襲名。後に四代目橘家圓蔵に預けられ、1922年5月には四代目三遊亭圓橘を襲名します。翌年父が亡くなり、1927年3月に三代目三遊亭小圓朝を襲名しました。一時は橘家圓喬襲名も計画しましたが、戦争の影響で実現せず、戦中には船勇亭志ん橋と名乗らされる時期もありましたが、1947年3月には再び三代目小圓朝に戻しています。1967年7月に脳出血で倒れてからは高座に復帰することなく、1973年に亡くなりました。地味ながら堅実な江戸前の芸風で、『しわい屋』『権助提灯』など多くの持ちネタを持っていましたが、他の大看板の陰に隠れて評価が不当に低かったという見方もあります。一方で、若手や大学の落語研究会に熱心に稽古をつけ、多くの後進を育てた育成者としての功績は大きいとされています。晩年には東大落研の師範を務め、後世の落語研究家を多数輩出しました。
四代目は高橋秀帆（1969年 - 2018年）。三代目の弟子である三遊亭圓之助の息子です。母方の祖父母は漫才師の大江笙子・茂夫妻という芸能一家に育ちました。高校在学中に父を亡くし、落語家の苦労を間近で見ていたため、一度は芸界とは異なる運送会社やベビー用品レンタル会社でサラリーマンとして働きました。しかし落語家への思いを断ち切れず、1992年に十代目柳家小三治に弟子入りしさんぽと名乗ります。ところが酒での失敗を重ね、わずか2年ほどで破門されてしまいます。落語界から離れますが、亡き父の弟弟子にあたる六代目三遊亭圓橘に報告に行った際、再入門を許されました。この時、師匠の指示で知人の建設会社で1年間大工見習いを経験しています。1997年10月、二ツ目に昇進する際に、父と同じ四代目三遊亭圓之助を襲名。そして2005年5月、真打昇進と同時に四代目三遊亭小圓朝を襲名しました。この襲名時期については、大師匠である五代目三遊亭圓楽からの打診より遅れた経緯がありましたが、師匠の六代目圓橘が三代目の三十三回忌に合わせて襲名させたいとの意向を持っていたためでした。六代目圓橘一門の総領弟子として、前座への太鼓指導など、円楽一門会全体の技術向上に貢献しました。日本ハムファイターズの大ファンとしても知られていました。肺炎のため49歳の若さで2018年12月15日に急逝。生前最後の高座は同年11月でした。先代である三代目小圓朝とは、父や師匠の闘病中の世話を通じて面識があったとされています。
初代とされる人物は、後に三遊一朝を名乗った噺家です。かつては芳村忠次郎を初代とする考えもありましたが、現代ではこの三遊一朝を初代と数えるのが一般的となっています。
二代目を名乗ったのは、芳村忠次郎（1858年 - 1923年）です。彼は二代目三遊亭圓生の門人であった三遊亭圓流を父に持ちました。幼い頃から落語の世界に身を置き、8歳で初代三遊亭圓馬の門下に入り圓平と名乗って高座に上がります。一時は六代目桂文治の門で桂文之助を称した時期もあるようです。15歳で父の弟弟子にあたる三遊亭圓朝の門下に入り朝松となります。3年間の前座修業を経て18歳で三代目橘家小圓太を襲名。圓朝や四代目圓生も名乗った由緒ある名跡を受け継ぎ、将来を嘱望されましたが、女性問題や借金で大きな失敗を犯し、師匠から破門寸前まで追い詰められます。このため、一時的に地方を巡業して回るドサ廻りの生活を送りました。25歳で東京に戻り、師匠圓朝に深く謝罪して三遊亭圓花として再出発を果たします。1885年には元の小圓太に戻り、1893年頃には初代三遊亭金馬に改名して真打に昇進しました。この「金馬」という名はそれまで「立川金馬」として受け継がれてきましたが、彼が初めて三遊亭の亭号を名乗ったため「初代三遊亭金馬」とされています。1903年8月に三遊亭圓馬に改名しますが、大阪に同名の圓馬が存在したため苦情が入り、1905年1月に三遊亭小圓朝と改めることとなりました。同年には、第一次落語研究会の発足にも参加しています。病により1922年に中風で倒れますが一度は回復。しかし静岡での巡業中に再発し、東京へ戻ったもののすぐに亡くなりました。享年67歳。父は三遊亭圓麗、実子は三代目三遊亭小圓朝です。得意ネタは師匠圓朝譲りのものが多く、『牡丹灯籠』『安中草三』『世辞屋』『女の子別れ』『星野屋』などがあります。多くの弟子を育て、五代目古今亭志ん生も二代目小圓朝門下でキャリアをスタートさせています。NHKのドラマ「いだてん」では八十田勇一が演じました。
三代目は芳村幸太郎（1892年 - 1973年）。二代目の実子にあたり、祖父も圓麗という落語一家の出身です。しかし、当初は落語に興味がなかったといいます。高等小学校卒業後、1907年2月に父である二代目の門下に入り朝松として噺家の道へ。2、3年で二ツ目に昇進して小圓治と改名し、父とのドサ廻りも経験しました。1917年2月に真打へ昇進し二代目橘家圓之助を襲名。後に四代目橘家圓蔵に預けられ、1922年5月には四代目三遊亭圓橘を襲名します。翌年父が亡くなり、1927年3月に三代目三遊亭小圓朝を襲名しました。一時は橘家圓喬襲名も計画しましたが、戦争の影響で実現せず、戦中には船勇亭志ん橋と名乗らされる時期もありましたが、1947年3月には再び三代目小圓朝に戻しています。1967年7月に脳出血で倒れてからは高座に復帰することなく、1973年に亡くなりました。地味ながら堅実な江戸前の芸風で、『しわい屋』『権助提灯』など多くの持ちネタを持っていましたが、他の大看板の陰に隠れて評価が不当に低かったという見方もあります。一方で、若手や大学の落語研究会に熱心に稽古をつけ、多くの後進を育てた育成者としての功績は大きいとされています。晩年には東大落研の師範を務め、後世の落語研究家を多数輩出しました。
四代目は高橋秀帆（1969年 - 2018年）。三代目の弟子である三遊亭圓之助の息子です。母方の祖父母は漫才師の大江笙子・茂夫妻という芸能一家に育ちました。高校在学中に父を亡くし、落語家の苦労を間近で見ていたため、一度は芸界とは異なる運送会社やベビー用品レンタル会社でサラリーマンとして働きました。しかし落語家への思いを断ち切れず、1992年に十代目柳家小三治に弟子入りしさんぽと名乗ります。ところが酒での失敗を重ね、わずか2年ほどで破門されてしまいます。落語界から離れますが、亡き父の弟弟子にあたる六代目三遊亭圓橘に報告に行った際、再入門を許されました。この時、師匠の指示で知人の建設会社で1年間大工見習いを経験しています。1997年10月、二ツ目に昇進する際に、父と同じ四代目三遊亭圓之助を襲名。そして2005年5月、真打昇進と同時に四代目三遊亭小圓朝を襲名しました。この襲名時期については、大師匠である五代目三遊亭圓楽からの打診より遅れた経緯がありましたが、師匠の六代目圓橘が三代目の三十三回忌に合わせて襲名させたいとの意向を持っていたためでした。六代目圓橘一門の総領弟子として、前座への太鼓指導など、円楽一門会全体の技術向上に貢献しました。日本ハムファイターズの大ファンとしても知られていました。肺炎のため49歳の若さで2018年12月15日に急逝。生前最後の高座は同年11月でした。先代である三代目小圓朝とは、父や師匠の闘病中の世話を通じて面識があったとされています。
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