三郡変成岩

三郡変成岩とは

三郡変成岩（さんぐんへんせいがん）は、九州北部から中国地方にかけて広く分布する、変成度の低い変成岩の総称です。福岡県の三郡山付近の地質が模式地とされ、この名が付けられました。千枚岩や結晶片岩が代表的な岩石で、低温高圧下で生成された藍閃石（らんせんせき）や緑簾石（りょくれんせき）などの鉱物を含むことが特徴です。

三郡変成岩の特徴

構成鉱物: 藍閃石、緑簾石、パンペリー石、アクチノ閃石など
形成環境: 低温高圧
原岩: 古生代末期（石炭紀・ペルム紀）に堆積した堆積岩
変成時期: ペルム紀末期から中生代三畳紀

三郡変成岩は、古生代末期に堆積した地層が、その後の造山運動による圧力で変成してできたと考えられています。また、中生代ジュラ紀には超塩基性岩の貫入、白亜紀から新生代古第三紀にかけては火成作用の影響も受けています。

三郡帯

三郡変成岩が分布する地域は、三郡帯（さんぐんたい）または三郡変成帯と呼ばれます。この帯は、高圧型変成帯としては日本最古のものと考えられていますが、実際には露出している部分が少なく、帯状に連続しているとは限りません。三郡帯は九州北部から中国地方に広がり、中国地方東部から近畿地方北部で飛騨帯（飛騨変成帯）と接しています。

学説の変遷

従来の学説

かつて、西日本には4つの主要な変成岩帯が存在すると考えられていました。北から順に、

1. 飛騨変成帯：富山から飛騨地方、福井を経て山陰地方の日本海沖
2. 三郡変成帯：九州北部から中国地方
3. 領家変成帯：長野県南部から愛知、三重、奈良、瀬戸内地方・北四国から九州中部
4. 三波川変成帯：領家変成帯の南側に並走

これらのうち、飛騨変成帯と三郡変成帯は秋吉造山運動、領家変成帯と三波川変成帯は佐川造山運動で形成されたとされていました。

また、変成岩は形成時の圧力と温度によって、「高温・低圧型」と「低温・高圧型」に大別されます。飛騨変成帯と領家変成帯は高温低圧型、三郡変成帯と三波川変成帯は低温高圧型に分類され、それぞれ火山のマグマ溜まり付近やプレート境界で形成されたと考えられていました。

新しい学説

しかし、放射年代測定技術の発展により、1980年代から1990年代にかけて、従来の三郡帯は3つの変成帯に区分されるようになりました。具体的には、

1. 蓮華帯（三郡蓮華帯）
2. 周防帯
3. 智頭帯

さらに2000年代には、蓮華帯と周防帯の2区分が提唱され、西日本の広域変成帯は飛騨、蓮華、周防、領家、三波川の5帯が並走しているという説が有力になりました。

この新しい学説では、これらの帯は約1億年おきにこの地域が高圧化におかれたことを示唆しており、日本列島が1億年周期で海嶺沈下と造山運動を繰り返してきた可能性が指摘されています。しかし、未だ不明な点も多く、今後の研究が期待されます。

まとめ

三郡変成岩は、その形成過程や分布、そしてそれらに関する学説の変遷を通じて、日本列島の複雑な地質構造を解き明かす上で重要な手がかりとなっています。今後の研究によって、三郡変成岩の謎がさらに解明されることが期待されます。

参考文献

『鳥取県大百科事典』,新日本海新聞社鳥取県大百科事典編纂委員会・編,新日本海新聞社,1984
大藤茂・理学部教授（富山大学・地球科学科）一般地質学 変成岩と変成帯p67-70,2014年9月20日閲覧。
* 『日本地方地質誌6 中国地方』,日本地質学会・編,朝倉書店・刊,2009

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