上杉憲栄

上杉憲栄（うえすぎ のりよし）は、南北朝時代から室町時代前期にかけて活動した武将、守護大名です。越後国守護を務め、越後上杉家の祖と位置づけられています。貞和六年（1350年）に父・上杉憲顕の子として生まれました。

十八歳で一度仏門に入り「道久」と称しましたが、将軍足利義満の命により京都へ戻されます。父憲顕の没後、応安元年（1368年）に越後守護職を継承し、京都にて幕府に仕えました。一時期、上杉朝房の猶子であったとも伝えられています。

彼が世俗を離れることを願った背景には、複数の要因が指摘されています。兄の上杉憲英（庁鼻和上杉家の祖）が越後守護の地位を巡り画策していた可能性や、越後国内の支配基盤である国衙領が、別の兄である上杉憲方や上杉朝房によって分有され、憲栄自身にはほとんどなく、国内統治が常に不安定だった状況などが考えられています。

天授四年（1378年）に再び出家し、遁世しました。但馬国で月庵宗光に師事し、後に山内上杉家の所領であった伊豆国大見郷八幡に隠棲し、如意輪寺を創建しました。康暦二年（1380年）には、甲斐国の向嶽寺で父の十三回忌を営んでいます。

応永二十九年（1422年）十月二十六日、如意輪寺にて没しました。越後守護職の後継は、守護代長尾高景の尽力により、甥の上杉房方が継承しています。

また憲栄は、下総国古河城主でもありました。『関八州古戦録』には、弘和二年（1382年）、小山義政が下河辺荘の拠点である古河城を攻めた際（小山義政の乱）、「この城は上杉左近将監憲栄の目代、下河辺三郎朝行が百騎ほどで守っていたが、二千騎の大軍に敗れ落城した」と記されています。

『古河志』では、古河城主としての憲栄を応安年間の人物として紹介しており、山内上杉氏の庶流ながら鎌倉府ではなく京都の室町幕府に仕えたとしています。古河城周辺地域は、小山義政の乱後に鎌倉府の直轄領となりますが、憲栄が城主だった時期は、京都の室町幕府の所領であったことがうかがえます。

もう一度検索