下河辺荘

下河辺荘（しもこうべのしょう）

下河辺荘は、中世に下総国葛飾郡に置かれた荘園です。現在の茨城県、千葉県、埼玉県にまたがる広大な地域に存在していました。この地域は、利根川、荒川、渡良瀬川などが入り組む沖積低地であり、河川の氾濫によって形成された自然堤防上に集落や耕地が発達しました。水運が盛んであったことも特徴です。

歴史

成立

下河辺荘は、平安時代末期に開発領主である下河辺氏が、源頼政を仲介して寄進したことで成立したとされています。寄進先については、鳥羽法皇、美福門院、八条院など諸説ありますが、遅くとも12世紀後半には八条院領に組み込まれました。

鎌倉時代

治承4年（1180年）、下河辺行平は源頼朝に従い、荘司職を安堵されました。その後、吉田経房が地頭職を得て、鎌倉幕府もこの荘園に関与を深めます。建長5年（1253年）には、幕府が堤防修築を行っています。北条氏が台頭すると、下河辺氏を御内人に取り込み支配を強化し、一部を称名寺に寄進しました。

室町時代

鎌倉幕府滅亡後、下河辺荘は一時小山氏の支配下に入りますが、小山氏の乱をきっかけに鎌倉公方足利氏満の御料所となりました。享徳の乱が発生すると、鎌倉公方足利成氏が古河城に移り、「古河公方」と称して室町幕府や関東管領と対立しました。和睦後も、古河公方は鎌倉に拠点を戻さず、下河辺荘は古河公方の拠点として重要な役割を担いました。古河公方麾下の佐竹義経がこの地域の領主となりました。

戦国時代

戦国時代以降、利根川などの河川の流路が変更されたため、下河辺荘の荘域は現在の茨城県古河市、境町、五霞町、坂東市、千葉県野田市、流山市、埼玉県久喜市、幸手市、杉戸町、春日部市、越谷市、松伏町、吉川市、三郷市にまたがる広大な範囲に及んでいます。当時の荘域は、上流域（古河市周辺）を「上方（野方）」、下流域（久喜市から野田市を経て三郷市に及ぶ地域）を「下方（河辺）」、大落古利根川、古隅田川、元荒川に挟まれた地域を「新方」と三分されていました。

荘内の村

下河辺荘内には、前林、河妻、赤岩などの平野村があったことが知られています。

交通

中近世の利根川東遷事業以前、この地域は利根川（大落古利根川）、荒川、渡良瀬川、太日河、隅田川（古隅田川）が入り組んでおり、これらを介した水運が盛んでした。

読み方

中世の史料では「しもかわべ」と平仮名で表記されることもありますが、現在では一般的に「しもこうべ」と読まれています。

参考文献

『吾妻鏡』
『新編武蔵風土記稿』
伊藤寿和「下総国 「下河辺荘」 に関する歴史地理学的研究: 低湿地農業の実態と万福寺 (満福寺) の比定地について」『日本女子大学紀要』第57号、日本女子大学文学部、2008年、77-96頁
原田信男「中世における村落の景観・補考(池上二良先生定年退職記念号)」『札幌大学女子短期大学部紀要』第17巻、札幌大学女子短期大学部、1991年、47-56頁
原田信男「下河辺荘の村々と景観」（『三郷市史 第六巻 通史編Ⅰ』（三郷市、1995年）、289-297頁）
原田信男「下河辺荘の荘域復原」（『中世村落の景観と生活』（思文閣出版、1999年） ISBN 4-7842-1022-9）
佐藤博信「下河辺荘」『国史大辞典 7』（吉川弘文館 1986年）ISBN 978-4-642-00507-4
段木一行「下河辺荘」『日本史大事典 3』（平凡社 1993年）ISBN 978-4-582-13103-1
瀧川恒昭「下河辺荘」『平安時代史事典』（角川書店 1994年）ISBN 978-4-040-31700-7
海津一朗「下河辺荘」『日本歴史大事典 2』（小学館 2000年）ISBN 978-4-09-523002-3

関連項目

下総国
葛飾郡
八条院領
小山氏
享徳の乱
足利成氏
古河公方
利根川東遷事業

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