上杉重房

上杉重房

上杉重房は、鎌倉時代中期に生きた公家であり、同時に武士でもありました。彼が上杉氏の祖となったことは、歴史的に非常に重要な意味を持ちます。

生涯

重房は、京都の中級貴族である左衛門尉・藤原清房の次男として生まれました。彼の人生における転機は、建長4年（1252年）に訪れます。鎌倉幕府の5代執権・北条時頼によって、5代将軍・藤原頼嗣が京へ送還され、代わりに後嵯峨天皇の皇子・宗尊親王が鎌倉へ下向することになりました。この時、重房は宗尊親王の介添えとして共に鎌倉へ赴き、丹波国何鹿郡上杉庄を賜り、以後上杉氏を称するようになったとされています。

しかし、『吾妻鏡』には、宗尊親王の鎌倉下向に随行した人々のリストに重房の名前は見当たりません。その一方で、『続国史大系』所収の「宗尊親王鎌倉下向記」には、後嵯峨院の乳母であった「西御方」の介添えとして、重房と官位が一致する人物が記録されています。このことから、重房は西御方に仕え、宗尊親王に直接仕える立場ではなかった可能性も指摘されています。

また、『尊卑分脈』によれば、重房は式乾門院の蔵人であったとされています。鎌倉時代の上杉氏は、五位以上の官位を得ることができずに没落したとされ、重房は村上源氏土御門流の家人であった可能性も考えられています。

文永3年（1266年）、宗尊親王は謀反の疑いをかけられ帰洛させられますが、重房は鎌倉に残り、武士として幕府に仕える道を選びました。その後、有力御家人である足利泰氏に仕えることになります。足利氏は代々北条氏から妻を迎えるのが常でしたが、『尊卑分脈』によれば、重房の娘（または妹）が足利頼氏の家女房となり、その間に生まれた家時は足利氏の当主となりました。この婚姻を通じて、上杉氏は足利家中で権勢を拡大していきました。足利氏が上杉氏との関係を重視した背景には、上杉氏が公家であり、朝廷との繋がりがあったことが影響していると考えられます。

さらに、重房の孫娘・清子は、家時の子・足利貞氏に嫁ぎ、後の室町幕府初代将軍となる足利尊氏やその弟・直義を産んでいます。また、清子の弟は題目宗の僧となり、日静と名乗り、京本圀寺や越後国三条本成寺の住職となりました。彼は、師である日印が幕府の殿中で全宗派を論破した様子を『鎌倉殿中問答』として記録しています。

鎌倉の明月院には、木造上杉重房坐像が所蔵されています（現在は鎌倉国宝館に寄託）。この坐像は、国の重要文化財に指定されており、重房の存在を今に伝える貴重な文化遺産となっています。

まとめ

上杉重房は、鎌倉時代という激動の時代を生き抜き、上杉氏の基礎を築いた人物です。公家から武士へという転身、足利氏との姻戚関係、そして子孫の活躍を通じて、日本の歴史に深く名を刻みました。

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