上音威子府駅

上音威子府駅（かみおといねっぷえき）

北海道中川郡音威子府村にかつて存在した、北海道旅客鉄道（JR北海道）天北線の鉄道駅（廃駅）です。電報略号は「カオ」、事務管理コードは▲121901が割り当てられていました。

歴史

当駅の歴史は、1914年（大正3年）11月7日に鉄道院宗谷線の音威子府駅から小頓別駅間が延伸された際に、一般駅として開業したことに始まります。その後、路線の名称は何度か変更され、1919年（大正8年）10月20日には宗谷本線の一部となり、1930年（昭和5年）4月1日には音威子府駅から稚内駅間が宗谷本線から分離されて北見線所属となりました。1949年（昭和24年）6月1日には公共企業体である日本国有鉄道に運営が移管され、1961年（昭和36年）4月1日には北見線から天北線へと線路名が改称され、当駅も天北線の駅となりました。

貨物や荷物の取り扱いは1973年（昭和48年）9月17日に廃止され、同時に列車交換設備も撤去され、駅は無人化されました。国鉄分割民営化に伴い、1987年（昭和62年）4月1日からはJR北海道の駅となりましたが、同年11月10日には営業期間を限定する臨時駅（4月1日から11月30日まで営業）へと種別が変更されました。そして、天北線の全線廃止に伴い、1989年（平成元年）5月1日をもって駅はその歴史に幕を下ろしました。

駅名の由来

駅名は、近くを流れる音威子府川の上流部に位置していたことから、「上」という冠称が付けられたものです。

駅構造

駅が廃止された時点では、地上に単式ホームが1面のみ配置され、線路1線に対応する構造（棒線駅）となっていました。ホームは線路の西側、南稚内方面に向かって左手に設けられていました。かつては列車交換が可能な構造で、千鳥状にずれた配置の単式ホームが2面2線存在していましたが、交換設備が運用されなくなった後に線路は撤去され、上り方面のホームだけが残存していました。第二次世界大戦以前には、周辺に広がる北海道大学の演習林から出荷される木材を積み込むための広大なヤード設備も備えていました。

駅自体は無人化されていましたが、有人駅として使用されていた当時の木造駅舎が残されていました。この駅舎は駅の敷地の西端に位置し、ホームに直接接していました。木造板壁で構成され、柱を外側に露出させてその間に縦板を張るという、独特のデザインを持つ建物でした。

駅周辺

駅の周囲には、かつて上音威子府の集落が広がり、上音威子府小中学校も存在しましたが、時代の変化と共に離農が進み、集落は消滅しました。現在では人の住まない無人地帯となっています。

国道275号（頓別国道）が駅跡から約0.1kmの距離を通っています。
天北川が流れています。
宗谷バスの運行する「上音威子府」停留所が近くにあり、天北宗谷岬線や都市間バスが停車します。

利用状況については、年間の乗車人員が記録されていた年がありましたが、詳細な数値データは公開されていません。

駅跡

駅の廃止後も、しばらくの間は駅舎やホーム、信号機器設備などが残存していました。1997年（平成9年）時点では、駅舎は荒廃が進みつつも、農機材の保管場所として再利用されていました。しかし、倒壊の危険性から、2004年（平成16年）9月頃までには撤去されました。駅舎が残っていた時期には、室内に設置されていた当時の椅子などもそのままの状態でした。

2009年（平成21年）秋の時点では、国道から駅前広場に至る未舗装の通路や駅前広場、そして石積みのプラットホームが確認できました。また、音威子府方面と小頓別方面へ延びていた線路の跡も見て取れましたが、ホームや線路跡には草木が覆い茂り、かつて貨物扱いが行われた構内の敷地も原野と化していました。ホームはその後も残存が確認されており、2010年（平成22年）や2011年（平成23年）時点でも同様でした。

2014年（平成26年）には、駅の開業100年を記念し、音威子府村の有志で組織された「天北線上音威子府機関支区鉄道倶楽部」（現在の「nociw＊」）が駅跡の修復活動を開始しました。村の「住民提案型まちづくり補助金制度」の支援を受け、専門業者によってプラットホームの修復工事が行われ、国鉄時代の仕様を模したレプリカの駅名標も新たに設置されました。翌2015年（平成27年）8月4日には駅名標の除幕式が執り行われました。2016年（平成28年）7月時点でも、周囲の草木は綺麗に刈り払われ、レプリカの駅名標が設置されたまま維持されています。

また、2011年（平成23年）の調査では、駅跡から南稚内方向へ約1km離れた場所に、嘉平川を渡る橋の橋台跡が残っていることが確認されています。

音威子府村は、2020年（令和2年）から、当駅跡地にある線路の敷石を特別な缶詰として販売する「旧国鉄天北線 線路の石缶詰」をふるさと納税の返礼品として提供しています。この収益金は、村内を走るJR宗谷本線のうち、廃止の危機にある筬島駅、咲来駅、天塩川温泉駅といった3つの駅の存続支援に充てられています。

隣の駅

北海道旅客鉄道（JR北海道） 天北線
音威子府駅 - （臨時）上音威子府駅 - 小頓別駅

なお、かつて当駅と小頓別駅の間には、天北栄仮乗降場が存在しました。これは1956年（昭和31年）11月19日までには開設され、1965年（昭和40年）10月（具体的な日付は不明）に廃止されています。

関連項目

日本の鉄道駅一覧
* 特定地方交通線

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