勝劣派

勝劣派（しょうれつは）とは

勝劣派とは、日蓮門下の諸門流のうち、法華経を前半の迹門（しゃくもん）と後半の本門（ほんもん）に二分し、本門が迹門よりも優れていると主張する宗派の総称です。この考え方は、法華経の解釈における重要なポイントであり、日蓮門下の各宗派の教義や歴史に大きな影響を与えました。

勝劣派の成立と展開

1872年（明治5年）、不受不施派を除く日蓮門下の諸派は統合され、日蓮宗となりました。しかし、1874年（明治7年）には、教義の違いから勝劣派を奉じる五つの門流（勝劣五派）が独立し、合同教団を形成しました。これが日蓮宗勝劣派です。勝劣五派とは、以下の通りです。

日興門流（富士門流、興門派）
日什門流（妙満寺派）
日陣門流（本成寺派）
日隆門流（八品派）
日真門流（本隆寺派）

しかし、この合同教団は長くは続かず、1876年（明治9年）には、各本山系の五派がそれぞれ分離・独立し、解消しました。その後、各派はそれぞれ独自の発展を遂げることになります。

勝劣派の教義

勝劣派の教義の中心は、法華経を迹門と本門に分け、本門に法華経の極意があるとする点です。法華経は全28品（章）で構成されますが、前半14品を迹門、後半14品を本門と区分します。勝劣派は、本門こそが法華経の真髄であり、より重要であると主張します。

勝劣派の分派

勝劣派の中にも、本仏の位置づけによって思想的な違いが見られます。大きく分けると以下の二つの分派が存在します。

日蓮を本仏とする勝劣派： 日興門流（富士門流）に属する日蓮正宗（富士大石寺）、保田妙本寺、西山本門寺などがこのグループに属します。
釈尊を本仏とする勝劣派： 日什門流、日隆門流、日真門流、日陣門流、および日蓮宗寺院を除く日興門流、日奥門流（不受不施派）などがこのグループに属します。

日興門流以外は、もともと一致派の諸門流から分派したものです。また、勝劣派内では室町時代から、宗祖を誰とするかの論争（宗祖本仏論争）が続いています。特に、富士門流（日蓮正宗大石寺）の日蓮本仏論と、八品派の宗祖本仏繰り越し本仏論が有名です。

勝劣派の歴史

明治時代

1872年（明治5年）に日蓮宗として統合されたものの、1874年（明治7年）に教義の違いから一致派と勝劣派に分裂しました。さらに1876年（明治9年）には、勝劣派も各門流に分立し、以下のように名称を変更しました。

日蓮宗興門派→1899年（明治32年）に本門宗と改称（日興門流）
妙満寺派→1898年（明治31年）に顕本法華宗と改称（日什門流）
本成寺派→1898年（明治31年）に法華宗と改称（日陣門流）
本隆寺派→1898年（明治31年）に本妙法華宗と改称（日真門流）
八品派→1898年（明治31年）に本門法華宗と改称（日隆門流）

1900年（明治33年）には、本門宗に属する大石寺とその末寺が独立し、日蓮宗富士派を組織しました。その後、1912年（明治45年）には日蓮正宗と改称し、勝劣派の宗派は6教団となりました。

大正時代

明治・大正期から昭和初期にかけて、勝劣派・日什門流の本多日生を中心に、日蓮門下の諸宗派を統合する運動がありました。本多日生は、宗派を超えた統一を目指し、1914年（大正3年）には日蓮門下7宗派の管長が集まり、「各教団統合大会議」を開催しました。また、勝劣派の6宗派による統合も成立し、合同講習会や統合修学林も開校されました。

この運動は、日蓮に対する「大師」号の授与運動も展開し、1914年（大正3年）には日蓮に「立正大師」の諡号が贈られました。しかし、在家主導の法華会が設立されると、知識人の多くがそちらに移行し、本多日生の運動は停滞しました。

第二次世界大戦中

1940年（昭和15年）に制定された宗教団体法により、政府は戦争遂行のために、仏教教団を国家権力下に掌握しようとしました。これにより、日蓮門下は以下の4宗派に再編されました。

日蓮宗: 本門宗・顕本法華宗が、一致派の日蓮宗と合同。
法華宗: 法華宗・本門法華宗・本妙法華宗の三派が合同。
本化正宗: 日蓮宗不受不施派と日蓮宗不受不施講門派が合同。
日蓮正宗: 一宗派として独立を維持。

戦後

戦後、各宗派は分離・独立・合流を繰り返し、複雑な状況となりました。旧本門宗の寺院は、日蓮宗に残るもの、独立するもの、日蓮正宗に合流するものなどに分かれました。旧顕本法華宗の寺院も、日蓮宗に残るものと、再び独立するものに分かれました。法華宗は、法華宗陣門流、法華宗真門流、本門法華宗・法華宗本門流などに分かれました。本化正宗は、妙法華宗（後に日蓮宗不受不施派）、日蓮講門宗（後に不受不施[[日蓮講門宗]]）に分かれました。

まとめ

勝劣派は、法華経の解釈を巡る宗派であり、その教義や歴史は複雑です。明治時代以降、宗派の統合や分裂を繰り返し、現在に至っています。その変遷は、日本の仏教史、特に日蓮門下の歴史を理解する上で重要な要素となっています。

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