下鶴間宿

下鶴間宿の歴史

下鶴間宿は、かつて相模国高座郡下鶴間村（現在の神奈川県大和市下鶴間）に位置した、大山道（矢倉沢往還）の宿場町です。この地は、八王子道（滝山道）との交差点でもあり、両道の継立業務も担っていたため、交通の要衝として賑わいました。

中世においては、鶴間郷は下鶴間村、上鶴間村、そして武蔵国多摩郡の鶴間村を含んでいました。足利尊氏・直義の所領目録には「絃間郷」として、また、1591年の知行宛行状には「東郡下鶴間郷」としてその名が見られます。

1669年、下鶴間村は継立村に指定され、名主が問屋場代を務めました。大山道では、東は馬が都筑郡長津田村まで、人足が鶴間村まで継立を行い、西は人馬ともに国分村まで継立を行いました。また、八王子道では、北は武蔵国多摩郡の原町田村、南は高座郡長後村まで継立を行いました。

1729年には、大山道の人足継立が鶴間村までであるのに対し、馬は長津田村までであることに不満を持った下鶴間村が奉行所に訴えを起こしましたが、鶴間村の主張が認められました。

1836年と1853年には、東海道の戸塚宿と藤沢宿の助郷に関する文書で、大山道と八王子道の人馬継立に加えて、御鷹御用捉飼場としての務めや、鎌倉郡信濃村の東海道の掃除役などを挙げ、窮状を訴えています。

1831年に下鶴間宿を訪れた渡辺崋山は、宿がわずか20軒足らずであったと記録しています。山本屋、松屋、三津屋、松葉屋、角屋、ちとせ屋などの旅籠がありましたが、昭和初期まで残っていた松屋を最後に、現在は一軒も残っていません。

ゆかりの人物

渡辺崋山: 江戸時代の南画家・蘭学者で、『游相日記』には1831年に下鶴間村の旅籠「まんぢう屋」に宿泊したことが記されています。
小山田与清: 江戸時代の国学者で、1814年に津久井方面を旅した際に、淵野辺から鶴間に入り休憩したと記録されています。
アーネスト・サトウ: イギリスの外交官で、1872年に富士山麓を旅した際に、厚木村から国分村を経て鶴間に入り、名主の家に宿泊しています。
伊能忠敬測量隊: 第九次測量隊が1816年に伊豆七島の測量の帰路、下鶴間宿に宿泊しました。ただし、伊能忠敬自身は高齢のため参加していません。

名所・旧跡

下鶴間ふるさと館: 旧小倉家住宅の主屋と土蔵を復元した文化施設です。1856年建築の主屋の床板裏面から発見された落書きにより、建築時期が特定されました。土蔵は農村部土蔵の特徴である置き屋根工法で作られており、この地域の典型的な土蔵とされています。1871年の英字新聞に掲載された下鶴間宿の写真にも写っています。
山王（日枝）神社: 大山咋神を祀る神社で、鳥居の左手には「右大山みち 左ふじさわみち」と刻まれた道標があります。一時、諏訪神社に合祀されましたが、後に元の場所に再建されました。
観音寺: 真言宗の寺院で、本尊は十一面観音です。武相卯歳観音札所第一番となっています。境内には、1680年建立の念仏供養塔や、江戸の歌舞伎役者・市川眼玉の供養塔があります。また、聖徳太子の孝養像も安置されています。
鶴林寺: 浄土宗の寺院で、不動堂があります。
不動明王塔: 鶴林寺の不動堂へ至る石段の麓に位置し、1743年建立の凝灰岩製の不動明王塔があります。
大山阿夫利神社御分霊社: 大黒天開運神社、大国主大神と豊臣秀吉を祀る社、新田義貞の銅像などがあります。
坂上厄除地蔵尊: 1764年造立の地蔵菩薩坐像が、厄除地蔵として信仰されています。
まんじゅうや跡: 渡辺崋山が宿泊した旅籠「まんぢう屋」の跡地です。

交通アクセス

バス: 神奈川中央交通バス 下鶴間下車
鉄道: 小田急電鉄江ノ島線 鶴間駅下車 徒歩20分、東急田園都市線 つきみ野駅下車 徒歩20分

隣の宿場

長津田宿 - 下鶴間宿 - 国分宿
長津田宿との間に人足のみの継立村として鶴間村がある
長津田宿と下鶴間宿の距離は1里（約3.9キロメートル）、下鶴間宿と国分宿の距離は2里（約7.8キロメートル）

参考文献

つる舞の里歴史資料館
大和市下鶴間ふるさと館
大和市の文化財

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