国分宿

国分宿：大山道と八王子道の要衝

神奈川県海老名市国分南に位置する国分宿は、江戸時代、大山道（矢倉沢往還）と八王子道（藤沢道）が交わる重要な宿場町として栄えました。これらの街道は、古くから交通の要衝として機能し、国分宿はその歴史の証人として存在感を示しています。

東海道の戸塚宿の助郷として、国分村は労働力や物資の提供を義務付けられていましたが、慶応3年（1867年）3月、国分宿駅が開設されたことにより、その負担から解放されました。この駅の新設は、国分宿の交通の便を向上させ、経済的な発展に大きく貢献したと考えられます。

明治時代30年代頃には、国分宿は最盛期を迎えました。多くの旅館、料亭、居酒屋、雑貨屋などが軒を連ね、活気に満ち溢れていたと伝えられています。人々の交流が盛んに行われ、街道沿いは賑やかな雰囲気に包まれていたことでしょう。しかし、明治43年（1910年）3月19日、大火に見舞われ、多くの建物が焼失するという大きな被害を受けました。この「国分の大火」は、国分宿の歴史に深い影を落とす出来事となりました。

残された歴史的遺産

大火を乗り越え、現在も国分宿の歴史を伝える数々の史跡が残されています。

国分の辻の庚申塔: 神奈川県道40号線と407号線の交差点付近に位置する石造物群の中に、嘉永3年（1850年）造立の庚申塔があります。「西 大山 あつ木」と刻まれたこの庚申塔は、当時の信仰や生活の様子を垣間見せてくれる貴重な遺物です。

大山道の道標: 天明年間に設置されたとされる道標が、相模国分寺（現寺院）の境内に現存しています。往時の交通事情や、人々の行き交う様子を想像させる、歴史を感じさせる遺構です。

海老名の大ケヤキ: 神奈川県指定天然記念物に指定されている大ケヤキは、樹齢約560年（または1300年）と推定され、幹周り9.2メートル、高さ12メートルにも及ぶ巨木です。かつては20メートルを超える高さがあったと伝えられていますが、戦後の落雷による被害で樹高が半分以下になってしまいました。それでもなお、その圧倒的な存在感で人々を魅了し続けています。

新道稲荷社: 江戸時代の大山道（矢倉沢往還）は、この社の正面を通っていたとされています。地域の信仰の中心として、人々の生活に深く関わってきた歴史が伺えます。

これらの史跡は、国分宿の歴史と文化を伝える貴重な遺産であり、後世に伝えていくべきものです。

交通アクセスと周辺情報

国分宿へのアクセスは、鉄道を利用するのが便利です。小田急小田原線、相模鉄道本線、JR東日本相模線の海老名駅が最寄りの駅となっています。

国分宿の隣接する宿場町としては、下鶴間宿と厚木宿があります。厚木宿との間には、相模川を渡る「厚木の渡し」が存在していました。

周辺には、相模国分寺や海老名市温故館など、歴史や文化に触れられる施設もあります。これらの施設を訪れることで、国分宿の歴史をより深く理解することができます。

国分宿は、街道の宿場町として栄え、そして大火に見舞われた歴史を持つ、重要な場所です。現存する史跡や周辺の施設を訪れることで、その歴史と文化に触れ、かつての賑わいを偲ぶことができるでしょう。

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