中臣国子

中臣国子（なかとみ の くにこ）

中臣国子は、飛鳥時代に活躍した豪族であり、名は国、国形、国巣子とも記されます。姓は臣。中臣可多能祜の子で、中臣御食子の弟にあたります。冠位は小徳を授けられ、大中臣氏の祖の一人として知られています。

出自

中臣氏は、神祇を司る職能を持つ氏族であり、忌部氏と共に、代々宮廷の神事・祭祀を担当しました。「中臣」という氏の名は、「中つ臣」が縮まったもので、神と人との仲介者という意味を持ちます。氏の本拠地は、河内国、大和国、豊前国、常陸国の4つにありました。『記紀』や『新撰姓氏録』「左京神別」によると、天児屋命の子孫とされ、「大中臣氏系図」には、欽明天皇の時代に中臣常盤が初めて「中臣連」を賜ったと記されています。

中臣氏は、藤原氏とは異なり、神祇を司るという職能を重視していました。この職能を通じて、朝廷における神事や祭祀において重要な役割を果たし、氏族としての地位を確立していきました。

経歴

中臣国子は、冠位十二階の第二位である小徳という高い位階にあり、政府内での発言力も大きかったと考えられます。

『日本書紀』巻第二十二には、推古天皇31年（623年）に新羅が任那を攻撃し、任那が新羅に服属した事件に関する記述があります。この事態に対し、天皇は新羅征伐を検討し、大臣である蘇我馬子と協議し、群臣たちからも意見を求めました。

この際、慎重派の田中臣は、状況を観察し、新羅の動向を見極めるべきだと主張しました。一方、国子は、任那が元々内官家（うちつみやけ）であったことを強調し、新羅から奪還して百済に与えるべきだと主張しました。田中臣は、百済の二心さを指摘し、百済に任那を渡すことの危険性を訴えました。

最終的に、田中臣の意見が採用され、吉士磐金と吉士倉下が新羅に派遣されることになりました。しかし、磐金らが帰国する前に、境部臣雄摩侶と中臣連国子らは突如、征新羅大将軍に任命され、数万の軍を率いて新羅を征討しました。新羅王は日本軍の兵力に恐れをなし、服属の意向を示したため、将軍らはこのことを天皇に報告し、天皇はこれを受け入れました。

この軍事行動は、強硬派によって強行されたものであり、大和政権内部の意見の不一致を露呈する結果となりました。また、この事件により、しばらくの間続いていた新羅との協調外交も崩壊することとなりました。

蘇我馬子は、事後報告を聞いて「軍隊をおくるのがはやすぎた」と発言したと伝えられています。

中臣国子の事績は、当時の東アジア情勢や大和政権内部の政治状況を理解する上で重要な手がかりとなります。

参考文献

『日本書紀』（四）、岩波文庫、1995年
『日本書紀』全現代語訳（下）、講談社学術文庫、宇治谷孟：訳、1988年
『日本の歴史2 古代国家の成立』、直木孝次郎：著、中央公論社、1965年
『日本古代氏族事典』【新装版】佐伯有清：編、雄山閣、2015年
『角川第二版日本史辞典』p709、高柳光寿・竹内理三：編、角川書店、1966
『岩波日本史辞典』p903、監修：永原慶二、岩波書店、1999年

関連項目

任那日本府
新羅使
* 征新羅大将軍

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