中野町 (高松市)

中野町（なかのちょう）は、香川県高松市の中央部に位置する町丁です。高松市の中心を成す高松市役所から南西におよそ1キロメートルの距離にあり、郵便番号は760-0008が割り当てられています。町域全体が、住居表示に関する法律に基づいて整然と区画されています。

町の地理的な境界は明確で、東側は交通量の多い主要幹線道路である中央通りに接し、南側は国の特別名勝に指定されている広大な日本庭園「栗林公園」が広がっています。西側は石清尾山塊の一部を成す稲荷山に面し、北側はかつて存在した霊源寺堀の跡地や市道中新町1号線によって区切られています。町域の大部分は、高松市の中心市街地からわずかに外れた、静かで落ち着いた雰囲気を持つ高密度な都市型住宅地が中心です。しかし、町の東端にあたる中央通り沿いの一帯は例外で、ここでは通りに沿って中高層の商業ビルが立ち並んでおり、対照的な景観を見せています。町内の道路は比較的新しい区画整理が行われたように見えますが、県道173号高松停車場栗林公園線や中央通りといった主要幹線から一歩脇道に入ると、そのほとんどが生活道路として一方通行になっています。さらに、南に位置する栗林公園と西の稲荷山という地形的な要因から、町へのアクセスや町からの流出は、主に北方向と東方向からに限られるという特徴があります。

2010年の国勢調査によると、中野町の人口は1309人で、内訳は男性が630人、女性が679人でした。世帯数は724世帯を数え、町域の総面積は約15万4448平方メートルです。これを基に算出される人口密度は、1平方キロメートルあたり8475.3人となっています。公立の小学校および中学校に通う児童・生徒の場合、町域の全域が亀阜小学校および紫雲中学校の通学区域に含まれています。

都市計画法に基づく用途地域としては、複数の種類が混在しています。中央通りに面したエリアは容積率600%の商業地域、そこから西へ進み市道天神前中野町1号線より東側は容積率400%の商業地域として指定されています。一方、栗林公園や稲荷山に接する街区は、容積率200%、建ぺい率60%の第一種住居地域に指定されており、主に良好な住環境の維持が目的とされています。これら以外の町の中央部にあたる地域は、容積率300%、建ぺい率80%の近隣商業地域に指定されています。かつて中野町内には、四国財務局や四国管区警察局といった国の機関が二つ立地していましたが、これらの公官庁は市内の他の官公署と共に、高松港周辺の再開発地区「サンポート高松」に建設された高松サンポート合同庁舎B棟へと移転しました。

町内を流れる河川として清水川があります。この川は高松市南部の鶴尾地区に端を発し、栗林公園の広大な堀の一部を形成した後、公園北門の東側からかつての霊源寺堀（現在の町内5番、12番、21番付近）へと流れ込んでいました。霊源寺堀からは流れが分かれ、一方は西へ向かって宮脇町北西部で摺鉢谷川に合流し、もう一方は東へ流れて市道藤塚町多賀町線に沿って進み、玉川を経てさらに下流で杣場川と合流していました。しかし現在では、東ハゼ町より下流の流路は、栗林公園内の堀の部分を除いて全て暗渠化されており、地上からは見えなくなっています。また、かつての霊源寺堀も完全に埋め立てられ、その跡地には市営中野団地などの住宅が建設され、市街地として利用されています。

中野町のすぐ南側には、江戸時代に歴代高松城主によっておよそ100年かけて整備された日本庭園であり、現在は国の特別名勝にも指定されている「栗林公園」があります。この歴史的な名庭園の景観を保護するため、中野町の一部地域には建築物の用途や高さに関する制限が設けられています。この制限は二つの地区に分けられます。一つ目は、香川県が指定した「風致地区」で、主に栗林公園とJR高徳線の線路に挟まれた地域がこれに該当し、建築物の高さは最高13メートルまでに制限されています。二つ目は、高松市が「地区計画」として指定した地域で、香川県の風致地区に含まれないエリアが対象となり、ここでは建築物の高さが最高18メートルまでに制限されています。これらの建築規制は、栗林公園周辺の優れた自然景観と歴史的環境を守ることを目的としています。

中野町の歴史は、1921年（大正10年）11月1日に、香川郡栗林村が大字中村の区域の一部を高松市へ編入した際に、新たな町として成立したことから始まります。もともと、この大字中村は「中ノ村」という名の香川郡に属する独立した村でした。1890年（明治23年）2月15日に町村制が施行された際に、中ノ村は藤塚町および上ノ村と合併し、栗林村の大字の一つとなりました。ただし、この合併の際に、中ノ村のうち樋ノ上と呼ばれた地域（後の東田町となる）は分離され、同時期に誕生した高松市に編入されています。第二次世界大戦末期の1945年（昭和20年）7月4日未明には、アメリカ軍による旧高松市域全体への無差別絨毯爆撃「高松空襲」により、町域の実に93パーセントが焼失するという壊滅的な被害を受けました。戦後の復興が進む中で、1958年には町内に高松市戦災犠牲者慰霊堂（通称：六角堂）が完成し、2009年まではここで毎年空襲の日に合わせ、戦災犠牲者を追悼する慰霊祭が執り行われていました。その後、中野町の町域は何度か変更されています。1964年（昭和39年）には町の一部が栗林町一丁目から三丁目、および藤塚町一丁目から三丁目へ編入されました。続いて1966年（昭和41年）には亀阜町および宮脇町一丁目から二丁目へ、さらに1969年（昭和44年）には中央町へそれぞれ編入され、現在の町域が定まりました。

町内には、住民生活や地域活動に関連する様々な施設が立地しています。主なものとしては以下の通りです。
井手口歯科医院
市営住宅中野町団地
高松市戦災犠牲者慰霊堂（六角堂）
JR高徳線 栗林公園北口駅
日本新薬高松支店
香川県接骨師会
浄土真宗 渋柿寺（渋柿地蔵）
四国新聞社本社・共同通信社高松支局
相谷内科医院
讃岐会館
高松市中野町公園
市立中野保育所
中野町ちびっこ広場
栗林公園館
* 中野稲荷神社

また、かつては町域内に高松琴平電気鉄道志度線が通っており、1917年（大正6年）には公園前駅と中野町駅（開業当初は中ノ村駅）が開業しました。しかし、1945年の高松空襲で営業を休止し、1957年（昭和32年）に正式に廃止されました。現在、当時の鉄道駅の痕跡は残っていません。

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