丹南広域農道

丹南広域農道の歴史と現状

福井県越前市と福井市を繋ぐ丹南広域農道は、全長約20.8kmの道路です。1989年（平成元年）11月15日に全線開通したものの、その歴史は幾多の困難と変遷を経てきました。

計画から開通まで

当初、丹南広域農道は福井臨海工業地帯と連携する産業道路として計画されました。1972年（昭和47年）に着工、越前市、鯖江市、越前町、福井市の4市町を結び、農産物輸送の重要な役割を担うことを目的としていました。しかし、用地買収交渉の難航が大きな問題となり、路線変更を繰り返しながら、部分的に工事が進められていくことになります。

特に、越前市片屋町では約92mの区間が開通せず、「開かずの道」として12年間も放置される事態となりました。これは地主との用地交渉が長期にわたり難航したためです。この区間は急カーブを強いられ、見通しの悪さから交通事故も多発していました。しかし、関係者による粘り強い交渉の結果、1989年にようやく交渉が成立し、工事が再開。同年9月4日に開通しました。

最後の未開通区間だった福井市在田町と越前町田中間の1.1kmについても、用地買収に難航しましたが、天王川橋の架設を経て、1989年に全線開通を迎えました。幅員9m（車道6m）の2車線道路として完成した丹南広域農道は、総事業費約65億6200万円を投じて建設されました。開通式典では、盛大なカーパレードも行われました。

現在の状況と今後の展望

丹南広域農道は、開通当初は農道としての役割が主でしたが、現在は主要地方道や国道365号の一部に転用されています。現在、農道区間として残っているのは、福井市と越前町のわずかな区間のみです。しかしながら、全体を指す通称として「旧丹南広域農道」の名称は広く使われています。

国道365号への編入以降も、丹南広域農道は重要な交通路として機能しています。福井市街から越前市、さらには嶺南地域や近畿地方へと繋がる重要なルートの一部となっています。また、地域高規格道路の候補路線である「丹南西縦貫道路」の構想ルートと重なる部分が多く、福井県の広域交通網において重要な位置を占めています。

しかし、一部区間では課題も残されています。鯖江市冬島町の約150m区間は幅員が狭く、センターラインがないため、対向車とのすれ違いや歩行者との接触に注意が必要です。また、福井市竹生町や鯖江市・越前市境付近には、勾配の大きい峠道があり、冬場の路面凍結には注意が必要です。越前市の国道化区間の一部では、通勤時間帯の渋滞が問題となっており、4車線化事業が進められています。

接続路線と沿線施設

丹南広域農道は、多くの主要道路と接続しています。福井県道6号、福井県道28号、国道417号、国道365号、国道8号など、様々な路線と接続し、地域交通の要となっています。

沿線には、商業施設、公共施設、教育施設など様々な施設が立地しています。PLANT-3清水店、ホームセンターヤマキシ朝日店、福井県立鯖江青年の家、福井県丹南運転者教育センターなどが沿線にあり、地域住民の生活を支えています。

まとめ

丹南広域農道は、その建設過程において幾多の困難を乗り越え、現在も福井県の重要な交通インフラとして機能しています。今後、4車線化事業などを通して、さらなる交通の安全と円滑化が期待されます。また、地域の活性化にも貢献する、重要な役割を担う道路として、その存在意義は大きいと言えるでしょう。

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