久我通雄

久我通雄：鎌倉時代の公卿、その生涯と久我家の家督相続問題

久我通雄（こが みちお）は、鎌倉時代中期から後期にかけて朝廷で重きをなした公卿です。中院太政大臣と号し、最終的には従一位太政大臣にまで昇りつめました。父は内大臣を務めた久我通基、母は権大納言である姉小路顕朝の娘という、由緒正しい家柄に生まれています。

経歴

以下に、彼の足跡を『公卿補任』、『尊卑分脈』、『園太暦』、『花園天皇宸記』などの史料に基づきまとめました。

正嘉元年（1257年）：叙爵。
正元元年（1259年）：侍従に任官。
正元2年（1260年）：従五位上に昇叙。
弘長2年（1262年）：禁色を許される。
弘長3年（1263年）：正五位下に昇叙。
弘長4年（1264年）：河内権介を兼任。
文永2年（1265年）：右少将に任官。
文永4年（1267年）：従四位下に昇叙。
文永5年（1268年）：加賀介を兼任。
文永6年（1269年）：右中将に転任。
文永7年（1270年）：従四位上に昇叙。
文永8年（1271年）：正四位下に昇叙。
文永9年（1272年）：信濃権介を兼任。
文永11年（1274年）：従三位に叙せられる。
文永12年（1275年）：美作権守を兼任。
建治2年（1276年）：母の喪に服し、復任。
建治3年（1277年）：正三位に昇叙。
弘安元年（1278年）：従二位に昇叙。
弘安6年（1283年）：権中納言に任ぜられる。
弘安7年（1284年）：正二位に昇叙。
正応元年（1288年）：中納言に転正、後に権大納言に転任。
正応5年（1292年）：権大納言を辞退後、還任し左大将を兼任。
永仁4年（1296年）：淳和院別当となる。
永仁5年（1297年）：内大臣に任ぜられ、奨学院別当となる。
永仁6年（1298年）：内大臣を辞任。
延慶元年（1308年）：父通基が薨去。
正和2年（1313年）：従一位に叙せられる。
元応元年（1319年）：太政大臣に任ぜられ、奨学院別当と源氏長者となる。
元亨2年（1322年）：輦車を許される。
元亨3年（1323年）：太政大臣を辞任。
* 元徳元年（1329年）：薨去。

久我家の家督相続問題

久我通雄の晩年には、家督相続を巡る問題が浮上しました。岡野友彦氏の研究によれば、通雄は晩年に生まれた通定を溺愛し、長男である長通を義絶して家督を譲ろうとしたとされています。洞院公賢の日記には、長通が父から義絶されたという風聞が記録されています。

しかし、最終的には勅命により長通が再び大納言に任ぜられ、長通が内大臣に就任すると同時に通定が権中納言を辞任。最終的に久我家の家督は長通とその子である通相へと引き継がれることになりました。

久我通光との共通点

岡野友彦氏の指摘によれば、久我家の一族である久我通光もまた、晩年に後室の西蓮に所領の大半を譲ったことが原因で、一族間で内紛が発生しました。通雄が通定に家督を譲ろうとした背景には、出自が不明な後室や、その所生の子供たちの将来を案じた可能性があるという点で共通しています。

また、源師房以来、村上源氏の中で参議を経ずに権中納言に直任されたのは、鎌倉時代末までに通光と通雄の2人だけでした。通光は『新古今和歌集』の入首歌人中最年少であり、通雄は村上源氏で2人目の二位中将に任じられています。これらの点から、通光と通雄が特権意識を抱いて所領問題を処理しようとした可能性も指摘されています。

久我通雄は、鎌倉時代における公家社会において重要な役割を果たした人物であると同時に、家督相続問題を通じて、当時の社会構造や価値観を反映する存在であったと言えるでしょう。

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