久米広縄

久米広縄（くめ の ひろただ/ひろつな）

久米広縄は奈良時代中期に活躍した歌人兼官人であり、彼の生没年は不詳です。姓は朝臣であり、職務は越中掾を務めていました。広縄の背景には、古代日本における著名な氏族、久米氏の一員であることが挙げられます。この久米氏は、蘇我氏と関連し、古代の皇別氏族として位置付けられています。彼らは武内宿禰の娘、久米能摩伊刀比売からの遺領を受け継いだ一族と言われています。

出自

久米氏はもともと臣姓として知られていましたが、八色の姓の制度が導入された際に朝臣という姓が与えられたと考えられています。この氏族には、歴史に名を刻む人物が多く存在し、特に壬申の乱で知られる来目塩籠もその一人です。

経歴

広縄の経歴には、特に天平17年（745年）に従七位上・左馬少允に任官したことが記録されています。また、天平20年（748年）3月以前には大伴池主の後を受けて越中掾の職に就任し、天平勝宝3年（751年）8月までその職に在任していました。当時の越中守は大伴家持であり、広縄は家持の指導の下で和歌の筆録を行ったとされ、これが『万葉集』第18巻に繋がる可能性があるとされています。

彼の活動

広縄の越中掾としての活動は、いくつかの出来事によって記録されています。たとえば、天平20年（748年）3月25日には越中守の大伴家持と共に布勢水海を遊覧し、翌日には自身の邸宅に田辺福麻呂を招待して饗宴を開きました。また、4月1日には再び自身の邸宅で宴を開催し、家持らとともに和歌を詠み交わしました。同年の夏には、朝集使として平城京に赴くこととなり、その後閏5月27日に越中国に戻ることになります。

さらに、天平勝宝2年（750年）1月5日、広縄は越中介・内蔵縄麻呂の邸宅での宴に参加し、同席した県犬養橘三千代の和歌を伝える役割を果たしました。8月4日には少納言に任じられた大伴家持が広縄の留守宅に悲別の歌を残すなど、文化的な交流が盛んに行われていたことが伺えます。

最後の消息

その後の久米広縄に関する情報は途絶えますが、天平勝宝5年（753年）に別の者が越中掾として記録されていることから、彼が官職を離れた可能性があります。『万葉集』には広縄からの長歌1首と短歌8首が収められており、これらは彼の文学的な業績を示す証拠です。

久米広縄はただの歌人ではなく、その活動を通じて当時の文化に深く関わる職務を果たしました。彼の和歌が後世に残ることは、彼の才能と活動の重要性を示すものです。

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