信貴山城

信貴山城は、奈良県生駒郡平群町信貴畑に位置する山城です。標高433mの信貴山山上に築かれ、大和と河内の国境を扼する要衝でした。この城は、木沢長政と松永久秀という二人の戦国武将によって、それぞれの時代に重要な役割を担いました。

立地と構造

信貴山城は、生駒山系に属する信貴山山頂に築かれた山城で、南北880m、東西600mに及ぶ広大な城郭を誇りました。山中腹には朝護孫子寺があり、周辺には高安山城、南畑ミネンド城、立野城といった支城も存在しました。この山城は、雄岳部分とその裾に扇形に広がる部分の二つに大きく分けられます。110以上の曲輪が築かれ、奈良県下最大規模の中世城郭でした。

歴史

黎明期

信貴山城の歴史は、古代[[山城]]である高安城の範囲に含まれる地域にまで遡ります。しかし、高安城の遺構は現在確認されていません。また、南北朝時代に楠木正成が築城したという伝承もありますが、確証となる史料は存在しません。

史料上の初見は、長禄4年（1460年）に畠山義就が応仁の乱の際に「信貴山」に陣を退いたという『経覚私要抄』の記述です。また、『足利季世記』には、明応年間末期から永正年間初頭にかけて畠山尚慶が「信貴城」を使用したという記録が残っています。

木沢長政の時代

本格的な城郭の構築は、木沢長政によって行われました。『細川両家記』には、天文5年（1536年）に「信貴城」が使用されたという記述があり、この頃には一定の規模の城が築かれていたと考えられます。『証如上人日記』には、信貴山城の完成を祝して本願寺から酒が贈られたという記録があります。信貴山城は、戦国期拠点城郭の先駆けとされています。しかし、木沢長政が天文11年（1542年）に戦死すると、信貴山城も落城しました。

松永久秀の時代

十数年の空白期間を経て、永禄2年（1559年）に松永久秀が大和へ侵攻し、信貴山城を修築して居城としました。永禄3年（1560年）には大和国を制圧し、信貴山城を大和支配の拠点としました。松永久秀は、信貴山城を大規模に改修し、現在見られるような城郭を築き上げました。また、多聞[[山城]]を政治拠点として築き、信貴山城を軍事拠点として使い分けました。信貴山城は一時的に筒井氏の手に渡りましたが、松永久秀はすぐに奪還しました。この頃、「信貴城衆」と呼ばれる勢力が存在し、地域社会で大きな力を持っていました。

永禄11年（1568年）には、三好三人衆との抗争で一時落城しましたが、足利義昭・織田信長の援軍を得て奪還に成功しました。

廃城

信貴山城は、松永氏の中心的軍事拠点として機能し、元亀元年（1570年）には松永久秀は本拠地を多聞城から信貴山城に移しました。しかし、天正5年（1577年）に松永久秀が織田信長に謀反を起こすと、信貴山城に籠城しました。織田信長は松井友閑を派遣して翻意を促しましたが、久秀は応じませんでした。織田軍の攻撃により信貴山城は炎上し、松永久秀は自害し、信貴山城は廃城となりました。

城郭の特徴

信貴山城は、雄岳部分とその裾の扇形に広がる部分の二つから構成されています。本丸跡には4層の天守櫓があったとされ、これは伊丹城に次いで日本で2番目に建造された天守であった可能性があります。この天守は織田信長の安土城にも影響を与えたとも言われています。城域からは割られた石臼が発見されており、これは石垣に用いられたものと考えられています。山城は、少数の兵力で大人数の敵を防御するのに適していますが、信貴山城は曲輪が山全体に広がっており、拠点を防衛するには兵力が分散してしまうという難点がありました。

松永久秀は、木沢長政時代の曲輪を一部破棄し、土塁や堀切を設けて、防御力を強化しました。特に松永屋敷の東側には土塁が築かれ、横堀のような効果を発揮しました。横堀は鉄砲の射撃陣地としても活用され、鉄砲戦が主流になると重要な防御施設となりました。織田信長も、松永久秀の築城ノウハウを取り入れ、丸山城以降、横堀を使用するようになりました。

アクセス

公共交通機関

近鉄生駒線信貴山下駅下車後、奈良交通バスで信貴山経由信貴大橋下車
近鉄信貴線信貴山口駅から西信貴ケーブル乗り換え、高安山駅下車後、近鉄バスで信貴山門行き終点下車

車

阪奈道路の生駒登山口から信貴生駒スカイライン
柏原市道信貴大県線：国道170号（旧道）の大県南交差点から東へ
奈良県道236号信貴山線
大阪府道183号本堂高井田線

朝護孫子寺に参拝者用の有料駐車場があります。

徒歩

近鉄高安山駅から信貴山頂まで約2時間
信貴山門バス停付近から信貴山頂まで約1時間
朝護孫子寺本堂付近から信貴山頂まで約30分

参考文献

平井, 聖、村井, 益男、村田, 修三編修編『日本城郭大系第10巻三重・奈良・和歌山』新人物往来社、1980年。
村田修三編『図説中世城郭事典第2巻』新人物往来社、1987年。
中川貴皓著「松永久秀と信貴山城」、天野忠幸編『松永久秀歪められた戦国の"梟雄"の実像』宮帯出版社、2017年。ISBN 978-4801600577。
『探訪日本の城第6巻畿内』小学館、1977年。
『風雲信長記-激情と烈日の四十九年-（歴史群像シリーズ27）』学習研究社、1998年。
戦国合戦史研究会『戦国合戦大事典第4巻』新人物往来社、1989年。

関連項目

日本の城一覧
日本の合戦一覧
筒井城の戦い
滝山城 (摂津国)
片岡城
織田政権
三好政権
畿内・近国の戦国時代

外部リンク

信貴山城]跡／[平群町公式ホームページ
信貴山城周辺地図／Yahoo!地図情報
朝護孫子寺参拝者用の駐車場周辺地図／Yahoo!地図情報
信貴山城／松永久秀 - 信貴山観光協会
『信貴山城』 - コトバンク

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