五百籏頭眞治郎

五百籏頭 眞治郎（いおきべ しんじろう）

五百籏頭 眞治郎（1894年 - 1958年）は、日本の高名な経済学者です。その専門は経済政策、経済思想史、特にイタリア経済学に及びました。神戸大学名誉教授、そして経済学博士として、多くの後進を育成するとともに、学術的な業績を残しました。敬虔なキリスト教徒としての信仰は、彼の研究活動にも深く影響を与え、キリスト教における所有権思想の研究などはその代表的なテーマの一つです。

国際的な活躍も特筆され、イタリア政府からは聖マウリッツィオ・ラザロ勲章コンメンダトーレ章を、ローマ教皇庁からは大聖グレゴリウス勲章コンメンダトーレ章を受章しています。

生い立ちと学歴

五百籏頭眞治郎は、1894年12月14日に大阪で生まれました。五人兄弟の末っ子でした。五百籏頭家は代々姫路藩に仕えた家柄で、特に度量衡の検査監督を一家で担う責任ある立場にありました。明治維新後、父である治作は大阪に移り住み、石鹸製造業を始めましたが、事業は苦境に陥り、一家は貧困を経験しました。

眞治郎は明星商業学校を経て、1917年に神戸高等商業学校（現在の神戸大学）を卒業。さらに1919年には東京高等商業学校（現在のより後の時代の東京商科大学・現在の一橋大学とは少し異なります）の専攻部を修了しました。高等商業学校在学中に、飯島幡司や福田徳三といった著名な研究者と出会い、当初は金融論に関心を寄せましたが、後に留学を機に、トマス・アクィナスに影響を受けたキリスト教における所有権思想の研究へとその対象を広げていきます。

神戸高商・商大時代と長期留学

東京高等商業学校を卒業した1919年、彼は母校である神戸高等商業学校の講師に就任します。第一次世界大戦終結直後の経済状況に関する研究を命じられ、文部省の留学生として1920年にフランスへ渡ります。当初2年間の滞在予定でしたが、現地で同校教授に昇格し、その後個人的に滞在期間を延長。結果として1929年までの約10年間、フランス、ドイツ、イタリア、スイス、イギリスなど、西ヨーロッパの主要国を巡りながら研鑽を積みました。特にイタリアでの滞在期間が長かったと言われています。留学中には、同時期に海外で学んでいた八木助市、坂本彌三郎、田中金司、石田文次郎、北村五良、平井泰太郎といった同僚たち、また東京高等商業学校の本間喜一、渡邉大輔、大塚金之助、金子鷹之助、井藤半彌、吉田良三、さらに名古屋高等商業学校の宮田喜代蔵、赤松要らと頻繁に交流を持ち、研究会を開いたり、将棋を楽しんだりしました。ドイツ滞在中には現地女性から結婚を申し込まれるという経験もしましたが、師事していた岩下壮一に学業を優先するよう諭され、これを断ったという逸話も残っています。

帰国後の活動とイタリアとの関係

1929年、フランスのルルドを最後に日本へ帰国しました。神戸商業大学の助教授、教授を務めましたが、神戸高等商業学校の大学昇格運動に多忙を極めたことなどから、帰国後は健康状態がすぐれないことが続きました。

イタリア研究者としての彼の知見は、政府からも高く評価されました。1940年には外交官の佐藤尚武や実業家の小林一三らと共に、学界代表として日本政府のイタリア経済使節団員に任命され派遣されます。彼はその後もイタリアに留まり、教皇庁との公使交換に関する交渉にも携わりました。同年、こうした功績が認められ、イタリア政府から一般人として最高の勲章の一つとされる聖マウリッツィオ・ラザロ勲章コンメンダトーレ章を、そしてローマ教皇庁からも同様に一般人として最高の勲章とされる大聖グレゴリウス勲章コンメンダトーレ章を受章するという栄誉に浴しました。

戦後の活動と晩年

第二次世界大戦後、神戸大学経済学部の教授として教壇に立ちました。1958年2月には長年の研究成果である「キリスト教所有権思想の研究」により神戸大学から経済学博士の学位を授与されます。同年3月には神戸大学を定年退職し、名誉教授の称号を受けました。その後、南山大学社会科学部の学部長に就任しました。

退職後の同年5月には、ブリュッセル万国博覧会で開催された世界ヒューマニズム大会で「日本民族の魂」と題する講演を行い、ルーヴァン大学哲学院からメルシェ記念メダルを授与されるなど、国際的な活動を続けました。しかし、その途上、インドで病に倒れ、ブリュッセルで入院。帰国後、1958年10月1日、脳血液循環障害のため慶應義塾大学病院で逝去しました。

彼には8人の子供がいましたが、逝去時には6人がまだ就学中であり、一家の経済的な支援のため、眞治郎の蔵書は神戸大学が購入し、「五百籏頭文庫」として整備されました。

門下生には、野尻武敏（神戸大学名誉教授）など、多くの優れた研究者がいます。

親族

五百籏頭家からは多くの著名な人物を輩出しています。父・治作は石鹸製造業を営みました。子供たちの中では、二男の五百籏頭博治が神学者、南山大学名誉教授として、五男の五百籏頭眞が政治学者、神戸大学名誉教授、文化功労者、防衛大学校長として知られています。また、長女の三宅正子は東レ基礎研究所所長を務めた三宅昭久氏の妻です。孫世代にも、政治学者の五百籏頭薫（東京大学教授）、経済学者の五百籏頭真吾（同志社大学教授）、音楽家の三宅純、映画監督の五百旗頭幸男、情報通信学者の五百籏頭健吾（岡山大学准教授）など、各界で活躍する人々がいます。

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