交響曲第1番 (シベリウス)

シベリウス 交響曲第1番 ホ短調 作品39

シベリウスの交響曲第1番 ホ短調 作品39は、1899年に完成された作品です。この作品は、シベリウスが番号付きの交響曲を作曲する前に手がけた、独唱と合唱を伴うカンタータ風の『クレルヴォ交響曲』(1891～92年)を経て作曲されました。

作曲の経緯

『クレルヴォ交響曲』の後、声楽を伴わない標題付き交響曲が計画されましたが、放棄されています。シベリウスはすでに交響詩の分野で、『フィンランディア』をはじめ、『エン・サガ』、『トゥオネラの白鳥』を含む『4つの伝説曲』など、代表作となる傑作を創作していました。連作交響詩という枠組みを超え、純粋器楽による標題つき交響曲を計画しながらも、それを放棄した点は興味深いといえるでしょう。

また、本作に着手する直前の1898年3月、シベリウスはベルリンでベルリオーズの幻想交響曲を聴き、大きな感銘を受けたと記録しています。そして、滞在先のベルリンで早速交響曲の作曲に着手しました。

当時のシベリウスは、酒に溺れ浪費癖があり、自堕落な生活を送っていましたが、この作品の作曲当初は酒も葉巻も控え、作曲に集中しました。しかし、それも長くは続かず、酒に酔ったあげく乱闘騒ぎまで起こしています。5月にはフィンランドへ帰り、国内各地を移動しながら作曲を進め、1899年の初めに完成させました。初演後、1900年に作品は改訂されています。

初演は1899年4月26日にヘルシンキにて作曲者自身の指揮で行われ、1902年にブライトコプフ・ウント・ヘルテルから出版されました。

楽器編成

フルート（ピッコロ持ち替え）2
オーボエ2
クラリネット2
ファゴット2
ホルン4
トランペット3
トロンボーン3
チューバ
ティンパニ
大太鼓
シンバル
トライアングル
ハープ
弦楽五部

曲の構成

標題のない交響曲ですが、内容はかなり交響詩風の作品です。第4楽章には「幻想風に」という指示がある一方、第1楽章の序奏と第4楽章の序奏に同じ主題を用い、どちらの楽章も最後はピツィカートで締めくくるなど、全曲を統一するための工夫が凝らされています。チャイコフスキー、ボロディン、ブルックナーの影響も随所にうかがえます。

第1楽章 Andante, ma non troppo - Allegro energico

ホ短調、序奏付きソナタ形式。ティンパニのトレモロの上でクラリネットが寂しげな序奏主題を奏でます。突然第2ヴァイオリンが刻みを始め、Allegro energicoの主部に入ると、残りの弦楽器が第1主題を提示します。この主題はシベリウス特有の雄大な広がりを感じさせます。第1主題がおさまったところで、ハープの特徴的な伴奏を伴ったフルートの副主題の後、オーボエが第2主題を提示します。展開部は幻想的で交響曲と言うよりは交響詩を連想させます。型どおりの再現部の後、終結部は金管楽器の重々しい響きに続いてピツィカートで締めくくられます。

第2楽章 Andante (ma non troppo lento) - Un poco meno andante - Molto tranquillo

変ホ長調、三部形式。第1主題は第1ヴァイオリンとチェロで演奏される穏やかなもの、第2主題はUn poco meno andante（幾分遅さを減じて）となり、ファゴットから木管楽器がフガート風に受け渡します。さらに副主題で盛り上がった後、中間部に入ります。Molto tranquillo（とりわけ穏やかに）となり、ここではホルンが穏やかな主題を奏でます。この後副主題を巧みに使いながら盛り上がり最初の主題が回帰します。

第3楽章 Scherzo. Allegro - Trio. Lento (ma non troppo)

ハ長調、ソナタ形式。スケルツォ主題はティンパニに導かれ、弦楽器、木管、ホルンが掛け合いながら提示する荒々しいものです。トリオ部分ではホルンが主体となり、伸びやかな牧歌を歌います。スケルツォが回帰すると、最初とは楽器の組み合わせや手順を変えて発展します。

第4楽章 Finale(Quasi una Fantasia). Andante - Allegro molto - Andante assai - Allegro molto come prima - Andante (ma non troppo)

ホ短調、序奏付きソナタ形式。「幻想風に」という指示通り、幻想曲や交響詩のような楽章です。Andanteの序奏では、第1楽章冒頭の序奏主題が弦楽器によりユニゾンで演奏されます。Allegro moltoの主部ではクラリネットとファゴット、オーボエが不安げな第1主題を提示します。この主題が強さを増し、シンバルや大太鼓がアクセントをつけたところでヴァイオリンが下降音型で崩れ落ち、Andante assaiの第2主題がヴァイオリンのユニゾンで切々と歌われます。やがてAllegro moltoに戻って第1主題による展開部に入ります。そのまま再現部に入り、第1主題を再現した後、再びAndanteとなり第2主題の再現が行われますが、曲はそのまま拡大を続けクライマックスを築き上げます。その後第1主題によるコーダとなり、急速に減衰し最後はピツィカートで曲を閉じます。

参考文献

菅野浩和 (1994). “シベリウス”. In 音楽之友社. 北欧の巨匠. 作曲家別名曲解説ライブラリー18. pp. 155-316. ISBN 4276010586

外部リンク

交響曲第1番 作品39の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)。PDFとして無料で入手可能。

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