交響曲第11番 (ショスタコーヴィチ)

ショスタコーヴィチ 交響曲第11番 ト短調『1905年』作品103

ドミートリイ・ショスタコーヴィチが作曲した交響曲第11番は、激動の時代を生きた作曲家の51歳の時に完成した標題交響曲です。各楽章に表題が付けられ、交響詩のような印象を与えます。

概要

この作品は、1905年に起きた「血の日曜日事件」を題材としています。帝政ロシア時代、民衆がロマノフ王朝に請願するためペテルブルク宮殿へ向かう際、軍隊が発砲し多数の死傷者が出ました。作曲当時はハンガリー動乱も起きており、この事件との関連も指摘されています。
ショスタコーヴィチは映画音楽を数多く手がけており、その得意とする標題音楽の手法がこの交響曲にも用いられています。革命歌や自作の合唱曲が引用されているのも特徴です。

かつて西側諸国ではプロパガンダ音楽として評価されていませんでしたが、ソビエト連邦崩壊後は歴史を描いた作品として再評価され、演奏機会が増えています。1958年には、この曲でレーニン賞を受賞しました。

初演

1957年10月30日、モスクワ音楽院大ホールにてナタン・ラフリン指揮、ソヴィエト国立交響楽団
西側初演: 1958年1月22日、ロンドン、ロイヤル・フェスティバル・ホールにてサー・マルコム・サージェント指揮、BBC交響楽団
アメリカ初演: 1958年4月7日、ヒューストンにてレオポルド・ストコフスキー指揮、ヒューストン交響楽団
日本初演: 1958年5月30日、日比谷公会堂にて上田仁指揮、東京交響楽団

構成

全4楽章からなり、各楽章は切れ目なく演奏されます。緩 - 急 - 緩 - 急という構成で、演奏時間は約60分です。

第1楽章: Adagio 「宮殿前広場」
冬のペテルブルク王宮前を描写。血の日曜日の静かで不気味な予感を表現し、帝政ロシアの重圧を感じさせます。革命歌「聞いてくれ！」や「囚人」が引用されています。
第2楽章: Allegro 「1月9日」
民衆の請願行進が描かれます。自作の無伴奏混声合唱曲「革命詩人による10の詩」の第6曲「1月9日」が流用されています。皇帝軍の一斉射撃による虐殺の光景、そして静寂の中での民衆の死が表現されます。
セルゲイ・エイゼンシュテイン監督の映画『戦艦ポチョムキン』の「オデッサの階段」のシーンで伴奏音楽として使用されたことでも知られています。
第3楽章: Adagio 「永遠の記憶」
犠牲者へのレクイエム。革命歌「君は犠牲になった」がヴィオラによって奏でられます。中間部では革命歌「こんにちは、自由よ」が引用され、復讐を呼びかけるような力強い讃歌へと発展します。
第4楽章: Allegro non troppo 「警鐘」
ロンド形式。革命歌「圧政者らよ、激怒せよ」に始まり、「ワルシャワ労働歌」が現れます。民衆の不屈の力を誇示するようなクライマックスが築かれますが、イングリッシュホルンによる悲しげなメロディ、そしてチューブラーベルの乱打が帝政ロシアへの警鐘を告げます。ゲオルギー・スヴィリードフのオペレッタ「ともしび」からの引用も含まれています。

楽器編成

木管楽器: フルート3（ピッコロ持ち替え1）、オーボエ3（イングリッシュホルン持ち替え1）、クラリネット3（バスクラリネット持ち替え1）、ファゴット3（コントラファゴット持ち替え1）
金管楽器: ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、テューバ1
打楽器: ティンパニ、トライアングル、小太鼓、大太鼓、シンバル、タムタム、シロフォン、チューブラーベル
その他: ハープ2-4、チェレスタ
弦楽器: 第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス

外部リンク

SovMusic.ru: 引用されている革命歌を聴くことができます。
ヴァーチャルうたごえ喫茶「のび」: 革命歌のMIDI演奏と日本語歌詞が掲載されています。

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