交響曲第3番 (プロコフィエフ)

セルゲイ・プロコフィエフ 交響曲第3番 ハ短調 作品44

セルゲイ・プロコフィエフが1928年に完成させた交響曲第3番は、彼の3番目の交響曲であり、そのドラマティックな構成と情熱的な音楽で知られています。この作品は、前年に完成させたオペラ『炎の天使』の音楽素材を基にしており、一時は『炎の天使』という副題で呼ばれることもありましたが、作曲者自身はそれを好まず、純粋な音楽作品として鑑賞されることを望んでいました。

作曲の背景

1927年に完成したオペラ『炎の天使』は、1928年にパリで演奏会形式で一部が上演されたものの、完全な形での初演の見通しが立っていませんでした。そこでプロコフィエフは、オペラの音楽を基にした組曲を計画しましたが、オペラの一つの主題がソナタ形式の主題として使えることに気づき、これを交響曲として完成させることを決意しました。作曲は1928年の夏から11月3日にかけて行われました。

プロコフィエフ自身は、この交響曲を「私の最上の作品の一つ」と自負しており、その出来に大きな自信を持っていました。また、この作品が『炎の天使』という標題で語られることには否定的で、あくまでも標題のない純粋な音楽作品として評価されることを望んだのです。この作品は、プロコフィエフのライバルであったストラヴィンスキーも高く評価しています。

この交響曲は、プロコフィエフの友人であるニコライ・ミャスコフスキーに献呈されました。

初演

交響曲第3番は、1929年5月17日にパリのサル・プレイエルにて、ピエール・モントゥー指揮、パリ交響楽団によって初演され、聴衆から好評を得ました。

楽器編成

この交響曲は、以下のような楽器編成で演奏されます。

木管楽器: ピッコロ、フルート2、オーボエ2、イングリッシュホルン、クラリネット2、バスクラリネット、ファゴット2、コントラファゴット
金管楽器: ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、チューバ
打楽器: ティンパニ、カスタネット、タンバリン、大太鼓、シンバル、小太鼓、鐘、タムタム
その他: 弦五部、ハープ2

曲の構成

この交響曲は、オペラ『炎の天使』の筋書きに沿っているわけではなく、純粋な交響曲として構成されています。全4楽章で構成され、それぞれの楽章が独立した音楽的性格を持っています。

1. 第1楽章 モデラート (Moderato)
ハ短調、序奏付きのソナタ形式で書かれています。
オペラ『炎の天使』では、序奏の主題は「レナータの絶望」、第1主題は「炎の天使マディエルへの愛」、第2主題は「騎士ルプレヒト」の主題に対応しています。
2. 第2楽章 アンダンテ (Andante)
ニ短調、静かで緩やかな三部形式の楽章です。
オペラ『炎の天使』第5幕「僧院の場」の音楽に基づいています。
3. 第3楽章 アレグロ・アジタート (Allegro agitato)
イ短調、スケルツォ形式の楽章です。
コントラバス以外の弦楽器を13声部に分割した独特な響きが特徴です。この着想は、ショパンのピアノソナタ第2番『葬送』の終楽章から得られたとされています。オペラ『炎の天使』第1幕第1場の音楽に基づいています。
4. 第4楽章 アンダンテ・モッソ (Andante mosso)
ハ短調、自由なソナタ形式で書かれています。
オペラ『炎の天使』第2幕第2場の悪魔の音楽が中心となっています。

演奏時間

この交響曲の演奏時間は、約34分から35分程度です。

参考資料

『作曲家別名曲解説ライブラリー20 プロコフィエフ』（音楽之友社）
柴田南雄『クラシック名曲案内ベスト１５１』 (講談社文庫)
プロコフィエフ:『交響曲全集』（ヴァレリー・ゲルギエフ指揮、ロンドン交響楽団、フィリップス/現デッカ）の解説書
プロコフィエフ:『交響曲第3番,他』（クラウディオ・アバド指揮、ロンドン交響楽団、デッカ）の解説書
『20世紀のアヴァンギャルド!!』（リッカルド・シャイー指揮、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団、デッカ）の解説書

外部リンク

交響曲第3番の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)（PDF形式で無料入手可能）

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