交響曲第8番 (ショスタコーヴィチ)

ショスタコーヴィチ 交響曲第8番 ハ短調 作品65

ドミートリイ・ショスタコーヴィチが作曲した交響曲第8番は、彼の交響曲の中でも特に重要な作品の一つです。交響曲第7番『レニングラード』に続き、戦争をテーマにした作品として構想されましたが、その暗澹とした内容から発表当初は評価が分かれました。

概要

スターリングラード攻防戦の犠牲者への鎮魂歌として、1943年の夏に作曲されました。しかし、戦場の悲惨な報道に触発されたため、作品は悲劇的な性格を帯びることになりました。戦局が好転していた当時、この暗い作風は「勝利の主題がない」と批判され、一時演奏が禁止される事態となりました。しかし、近年ではその深い音楽性と戦争の現実を直視した表現が高く評価され、ショスタコーヴィチの代表作の一つとして認識されています。

初演は1943年11月4日にエフゲニー・ムラヴィンスキーの指揮で行われ、ムラヴィンスキーに献呈されました。日本初演は1948年です。

曲の構成

全5楽章から構成され、演奏時間は約60分です。

第1楽章: Adagio - Allegro non troppo - Allegro - Adagio

ハ短調、4/4拍子。約30分にも及ぶ、この交響曲で最も長い楽章です。交響曲第5番と同様、アーチ型のソナタ形式を採用しています。低弦による力強い序奏に続き、沈痛な第1主題が現れます。内省的な第2主題、メランコリックな第3主題を経て、展開部では激しい感情が爆発します。暴力性と皮肉さが入り混じったクライマックスの後、静かに楽章を閉じます。

第2楽章: Allegretto

スケルツォ、変ニ長調、4/4拍子。力強くも、どこかユーモラスな雰囲気を持つ楽章です。単調な主題の反復と変形が特徴的です。

第3楽章: Allegro non troppo

ホ短調、2/2拍子。機械的なリズムが繰り返される中、ファンファーレ風の旋律が奏でられます。音楽は次第に凶暴さを増し、頂点で全楽器が爆発し、次の楽章へと繋がります。

第4楽章: Largo

パッサカリア、嬰ト短調、4/4拍子。前楽章の激しさを受け継ぎつつも、静かで葬送行進曲のような音楽が繰り返されます。内省的で暗い、悲痛な雰囲気が漂います。

第5楽章: Allegretto - Adagio - Allegretto

ハ長調、3/4拍子。ロンド・ソナタ形式。前の楽章から一転して、田園舞曲風の主題が現れます。フガートが展開されたり、第1楽章のクライマックスが回想されたりしますが、最後は穏やかに、しかし戦争の終わりが見えないかのように静かに終結します。

楽器編成

木管楽器: ピッコロ2、フルート2、オーボエ2、イングリッシュホルン1、小クラリネット1、クラリネット2、バスクラリネット1、ファゴット2、コントラファゴット1
金管楽器: ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、チューバ1
打楽器: ティンパニ、シンバル、トライアングル、大太鼓、小太鼓、シロフォン、タムタム、サスペンデッドシンバル
弦楽器: 第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス

評価と録音

交響曲第8番は、発表当時は賛否両論がありましたが、現在ではショスタコーヴィチの傑作の一つとして広く認められています。ムラヴィンスキーをはじめ、多くの指揮者によって録音されています。

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