京王6000系電車

京王6000系電車：通勤輸送を支えたアイボリーの軌跡

京王6000系電車は、1972年から1991年にかけて製造された京王電鉄の通勤形電車です。都営地下鉄新宿線への乗り入れを前提に設計され、京王電鉄として初めて20m級の車体と両開き4扉を採用しました。304両が製造され、2011年まで京王線や都営新宿線で活躍しました。また、同社最後の「アイボリー」塗装の車両としても知られています。

概要

6000系は、沿線人口の増加や相模原線延伸、都営新宿線乗り入れ構想といった背景から、輸送力増強のために開発されました。製造コストや保守コストを抑えつつ、当時の最新技術を導入した車両として、京王電鉄の車両史において重要な位置を占めています。

新宿線乗り入れにあたっては、東京都から改軌を求められたものの、輸送力確保の観点から見送られました。また、車体幅については、新宿線の車両限界である2,800mmに合わせるため、初代5000系と同じ室内幅2,600mmを維持しつつ、側窓を1枚下降式とするなどの設計上の工夫が凝らされました。

車両史における位置づけ

6000系は、京王線用として初めて20m車体を採用した車両であり、以降の新型車両に大きな影響を与えました。7000系以降はステンレス車体となりましたが、6000系は京王線用としては唯一の20m級普通鋼製車両です。また、床面幅が拡大されたことに伴い、ホームの改修や従来車両の出入口ステップ拡幅工事が行われました。

制御方式は、初期の6編成が抵抗制御、それ以降は界磁チョッパ制御を採用しました。電気指令式ブレーキやT形ワンハンドルマスコンは、改良を重ねながら6000系以降の京王線用車両に引き継がれています。台車についても、ほぼ同一形態の2種類に統一され、基本構造は7000系や8000系（最終製造車を除く）に継承されました。

6000系は、製造当初から冷房装置を搭載しており、初期の先頭車は集約分散式でしたが、後に全車集中式に統一されました。

構造

外観

新宿線乗り入れに対応するため、20m車体、1,300mm幅の両開き4扉を採用しました。室内幅を確保するため、側窓は1枚下降式とし、壁の厚さを薄くする工夫が施されました。車体外幅は2,780mmで、ステンレス車体化の際にコルゲートを追加できるよう考慮されています。車体色はアイボリーで、窓下にえんじ色の帯が巻かれました。

先頭部には、非常脱出や編成間の通り抜けを考慮した貫通扉が設けられました。正面窓下に前照灯、窓上に種別・行先表示器が設置され、表示幕類は黒地とすることで視認性を高めました。

内装

座席はロングシートで、褐色のモケットが貼られました。壁色はアイボリー系で、天井には冷風ダクトが設けられ、室内灯が取り付けられました。座席端のアームレストは、着席客と立席客の両方に配慮した設計となっています。冷暖房効果を高めるため、中間連結部には引戸が設けられました。

乗務員室

京王の車両として初めてワンハンドル式主幹制御器を採用しました。計器類は必要最小限に抑えられ、添乗係員が見やすい位置に電流計や電圧計が設置されました。ATC設置に備え、速度計外側には車内信号表示スペースが設けられました。

主要機器

走行関係装置

初期の抵抗制御車は、日立製主制御装置や直流直巻電動機を搭載しました。1973年以降の界磁チョッパ制御車は、回生ブレーキを採用し、主制御装置や直流複巻電動機も変更されました。駆動装置はTD平行カルダン駆動、制動装置は電気指令式電磁直通ブレーキを採用しました。

台車

台車は、東急車輛製造製の車体直結式空気ばね、ペデスタル式軸箱支持のTS-809（動力台車）とTS-810（付随台車）を採用しました。界磁チョッパ制御車は、回生ブレーキ使用に対応してTS-809Aに形式変更されています。

補機類

集電装置として、東洋電機製造製のPT-4201形パンタグラフを搭載しました。補助電源装置は、電動発電機やブラシレス電動発電機、静止形インバータなど、複数の種類が使用されました。電動空気圧縮機は、HB-2000やHS-20Dが搭載されました。

冷房装置

集約分散式と集中式の冷房装置が搭載されました。能力は9.3kWから48.8kWまで、車両によって異なりました。冷房装置は寿命に応じて何度か交換され、型式が異なるものや、3000系や5000系と交換されたものもありました。

形式構成

6000系は、制御電動車（デハ6000形、デハ6400形、デハ6450形）、付随車（サハ6550形）、制御車（クハ6700形、クハ6750形）で構成されます。各形式とも、一部の例外を除いて固定編成中で下2桁は同番号または同番号+50となっています。

歴史

6000系は、製造時期や改造によって仕様が変化しました。1972年に製造された最初のグループは抵抗制御でしたが、1973年以降は界磁チョッパ制御に変更されました。6両編成を8両編成化する工事や、新宿線乗り入れ対応工事、5扉車から4扉車への改造なども行われました。

1998年から廃車が始まり、2011年3月までに全車引退しました。一部車両は事業用車デワ600形に改造され、2016年まで使用されました。

運用

6000系は、登場当初は急行用として使用されましたが、後に特急や各駅停車など、様々な種別で運用されました。新宿線乗り入れにも長らく使用されましたが、ATC更新後は廃車が進み、2009年に乗り入れ運用から撤退しました。

競馬場線や動物園線では、ワンマン運転対応の専用編成が使用されました。これらの編成が最後に残り、2011年3月までに全車廃車されました。

デワ600形

6000系の一部車両は、事業用車デワ600形に改造されました。デワ601は、運転台を新設し、単独で走行できるように改造されました。デワ621とデワ631は、簡易運転台を設置し、貨車を牽引するために使用されました。デワ600形は、2016年にデヤ901・902形に置き換えられました。

保存車

デハ6438が京王れーるランドで静態保存されています。開館当初は京王レッドと京王ブルーの帯色でしたが、2023年3月からは旧塗装のえんじの帯色に復元されました。また、クハ6722とクハ6772の運転台部分も同所に展示されています。

京王6000系は、高度成長期からバブル崩壊後の激動の時代まで、京王電鉄の通勤輸送を支え続けた名車です。そのアイボリーの車体は、多くの人々の記憶に刻まれています。

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