仙波太郎

仙波 太郎（せんば たろう）は、日本の陸軍軍人であり、後に政治家としても活動した人物です。1855年6月5日（安政2年4月21日）に伊予国久米郡福音寺村（現在の愛媛県松山市）で生まれ、1929年2月19日（昭和4年2月19日）に亡くなりました。最終階級は陸軍中将で、衆議院議員も務めています。

幼名を惣太郎といい、少年時代は行商で家計を助けながら学びました。南久米村の三輪田塾で基礎教育を受け、福沢諭吉の著作などを通じて新しい知識を積極的に吸収したと言われています。また、能書家としても知られており、幼少期に三輪田米山の私塾で書を学んだ経験があり、鳳林という雅号を持ちました。

軍の道に進み、陸軍教導団を経て1878年12月に陸軍士官学校（旧2期）を卒業。翌年2月には歩兵少尉に任官し、歩兵第8連隊付となりました。1885年12月には陸軍大学校の第一期生として入学し、優等（三席）の成績で卒業するなど、その才覚を示しました。卒業後は参謀本部勤務、ドイツ留学、歩兵大隊長などを経験しました。

日清戦争では第5師団参謀として出征し、平壌攻略戦などに参加しました。その後も第2師団、第3師団、第10師団、第8師団といった各師団の参謀や参謀長、歩兵第24連隊長などの要職を歴任しました。1903年4月には義和団事件後の清国駐屯軍司令官に就任し、同年7月には陸軍少将に進級しました。

日露戦争中、清国駐屯軍司令官として、満洲軍総司令部と緊密に連携しながら、清国内での情報収集や宣撫工作といった活動に携わりました。また、北京公使館付武官であった青木宣純大佐が指揮した、ロシア軍後方における破壊工作を行う特別任務班の活動も手厚く支援したとされています。ただし、この時期の清国駐屯軍司令官としての仙波の活動に関する詳細な史料は、現段階ではほとんど見つかっていないのが現状です。

日露戦争後は、歩兵旅団長などを経て、1910年11月に陸軍中将に進級しました。その後、下関要塞司令官、さらには第17師団、第3師団、第1師団といった主要な師団の師団長を歴任しました。1916年8月には待命となり、翌年4月に予備役に編入されます。さらに1917年4月21日には後備役に編入されましたが、第一次世界大戦後のシベリア出兵に伴い召集を受け、1918年8月から翌年4月まで留守第12師団長を務めています。

軍務を退いた後は、妻の実家がある岐阜県稲葉郡加納町（現在の岐阜市）に移り住みました。地元では青年団や婦人会などの活動を支援し、地域振興に尽力しました。1920年には第14回衆議院議員総選挙に岐阜3区から出馬し、当選を果たしました。衆議院議員としては、1924年1月の任期満了まで、軍人恩給法の改正といった課題に取り組みました。

その功績に対し、位階は従三位まで昇り、功三級金鵄勲章、勲二等旭日重光章、勲一等瑞宝章など、多くの勲章を授与されています。

陸軍内部では、同時代の軍人である桂太郎（または林太郎中将）や宇都宮太郎と共に、「陸軍の三太郎」の一人としてその名を知られました。また、能書家としての一面も持ち合わせていました。

このように、仙波太郎は軍人として陸軍大学校優等卒業、日清・日露戦争での貢献、清国駐屯軍司令官などを務め、中将に昇進。退役後も政治家として国政に携わるなど、波乱の時代を生きた人物です。

もう一度検索