伊勢命神社

伊勢命神社の概要

伊勢命神社（いせみことじんじゃ）は、島根県隠岐郡隠岐の島町にある神社です。この社は、『延喜式神名帳』にも名神大社として記載されている重要な式内社で、その社格は旧郷社に位置づけられています。神社は島後の北端に位置しており、地域における信仰の中心となっています。

社名の由来

神社の名称は、寛文7年（1667年）の『隠州視聴合紀』以降の文献では「内宮」または「内宮大明神」として記載されています。近世では、伊勢の皇大神宮の別社と見なされていましたが、祭神が「伊勢命」とされ続けていたことから、明治時代に入って再び「伊勢命神社」として復元されました。

祭神について

この神社の祭神は伊勢命であり、隠岐国に特有の神とされています。その神名や磯部との深い関連性から、海人を通じて伊勢地方と密接なつながりを持つ神であると考えられています。また、古くから雨を祈願する効能があるとの信仰も寄せられています。

歴史的背景

伊勢命神社の由緒によれば、伊勢族が隠岐島に初めて居住した際、海上に現れる神火が毎晩彼らを照らしていたことが伝えられています。この神火は、現鎮座地から南西に5.5km離れた字仮屋に留まったとされ、そこに祖神である伊勢明神を祀る小さな祠を建てることで、神火の出現が止まったと言われています。

また、正倉院文書に記録された天平4年（732年）の『隠岐国正税帳』では、役道郡の少領として「磯部直万得」の名前が見受けられます。さらに、磯部は『古事記』に記載されている「伊勢部」として、伊勢を本拠とする漁猟を仕事とした部民だったと考えられています。特に隠岐における磯部氏の存在が、神社の創祀に関与していたとされ、地元の海民の動きがあったと推測されています。

中世以降の信仰

この神社は早くから中央に知られる存在であり、『続日本後紀』嘉祥元年（848年）には、その霊験が文献に記載されています。これは、隠岐国の4大社の一つとして国幣大社に列せられた理由の一つとされています。中世以降は武家からの崇敬も受け、様々な寄進が行われてきました。

神事と祭り

伊勢命神社では、例祭が毎年7月26日に行われ、夜間には神楽が奉納されます。隔年には神幸祭も催され、そのある年が「本祭り」、ない年が「裏祭り」と呼ばれます。祭日は、明治以前は6月2日でしたが、太陽暦施行後に7月16日に変更され、現在の日付に定められました。さらに、久見神楽もこの時期に奉納される伝統があります。

神職と社殿

神社の神職は、古くは伊勢または磯部姓の者が担っていたとされ、近代以降は八幡氏によって引き継がれています。社殿は1841年に建て替えられ、その後は屋根が銅板葺きとされています。その他にも、拝殿や随神門、神楽殿などが存在しています。

文化財の指定

伊勢命神社の本殿および拝殿は、1995年に隠岐の島町の有形文化財として指定されています。神社は地元の文化と歴史を重んじ、地域の信仰の象徴として今も多くの人々に親しまれています。

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