伊豆箱根鉄道7000系電車

伊豆箱根鉄道7000系電車は、伊豆箱根鉄道駿豆線で使用されている電車です。1991年（平成3年）と1992年（平成4年）に1編成ずつ、計2編成が製造されました。

概要

7000系は、老朽化した1000系の置き換え、車両の新性能化、冷房化率の向上を目的として導入されました。また、当時は一部座席指定の快速列車の増発も視野に入れられていました。

製造は3000系や5000系と同様に東急車輛製造が担当しましたが、実際には東急車輛から委託を受けた新潟鐵工所が製造しました。

設計当時、東海旅客鉄道（JR東海）東海道本線への乗り入れ、熱海・沼津・富士方面への直通運転が社内で検討されていました。そのため、7000系の設計には、その影響が色濃く反映されています。しかし、JRへの直通運転は2025年現在まで実現していません。一部の乗り入れ対策機器はすでに撤去されています。

車両概説

外観

車体寸法などは3000系ステンレス車を基本としていますが、前面デザインは大きく異なります。前面は中央部で「く」の字型に折れており、後退角が設けられています。前面窓は支柱のない大型一枚ガラスを採用。窓下には一体型ケースに収められた前照灯と後部標識灯、窓上部内側には行先表示幕、種別表示幕、列車番号表示器が配置されています。また、前面下部には小型スカート（排障器）が設置されています。

側面は、先頭車と中間車で仕様が大きく異なります。先頭車は従来車と同様の片側3扉構造ですが、座席配置の関係から窓配置が異なり、当時JR東海で増備されていた311系と同一とされました。中間車は、快速運転時に指定席車両として使用することを考慮し、213系に似た片側2扉構造です。乗降性を考慮し、客用扉幅は先頭車の1,300mmに対し、1,400mmに拡大されています。伊豆箱根鉄道では初となる側面行先種別表示幕が全車に設置されました。

車体の配色は3000系ステンレス車と共通で、ステンレス地に「ライオンズブルー」と呼ばれる青帯が巻かれています。

第2編成は2017年11月の全般検査で、先頭車の額縁部分が銀色から金色に、帯色が「ライオンズブルー」から「レジェンドブルー」（西武鉄道グループのコーポレートカラー）に変更されました。

主要機器

主制御装置は三菱電機製の電動カム軸式抵抗制御装置ABFM-168-15MDHCで、3000系2次車と同じものを使用しています。主電動機は、静粛性の向上と保守の軽減のため、同社初のTD平行カルダン駆動方式を採用し、TDカルダン駆動に対応した日立製作所製HS22535-08RBを搭載しました。主電動機の定格出力は3000系と同一（端子電圧375V時:120kW）ですが、歯車比が異なり、7000系では15:84=1:5.60と若干高速寄りの設定となっています。

パンタグラフは東洋電機製造製PT48系で、伊豆箱根鉄道における下枠交差型パンタグラフの初採用例となりました。制動装置はナブコ（現:ナブテスコ）製の発電制動併用電気指令式空気制動 (HRD-1D) です。補助電源装置は三相交流440V 120kVAの静止形インバータ（SIV）、空気圧縮機はHS-20形（容量:2000l/min）と、3000系2次車と同じものを搭載しています。

台車は、電動車が住友金属工業製緩衝ゴム式空気ばね台車FS542N、制御車が同FS042Nを装備します。これらは西武新2000系で実用試験が行われていた緩衝ゴム式台車FS542・FS542Aを同社向けに改良したもので、型式末尾の「N」は伊豆箱根鉄道向け製品であることを示します。軸箱支持装置以外の形状はFS372系台車とほぼ同一で、台車枠以上の部品については互換性があります。なお、FS542系台車は後に西武10000系にも採用されています。

運転台機器は、将来の直通運転を考慮し、3000系で採用されたワンハンドル式ではなく、JR211系と同一配置の縦横軸併用ツインレバー式が採用されました。先頭車の屋根部にはJR列車無線用アンテナ取付座が準備され、保安装置もJR東海のATS-ST形との切替が可能なものを搭載しています。新製当初は運転室内にATS切替スイッチも装備していましたが、後に撤去されました。

内装

座席配置は、直通運転や快速運転での快適性を考慮し、伊豆箱根鉄道初のオールクロスシート仕様となりました。客用扉間には転換クロスシート、車端部にはボックスシートが設置されています。

座席モケットの色は、第1編成の先頭車はベージュ系、中間車は従来車と同様の赤系統のものが採用されました。第2編成では先頭車・中間車とも赤・黒・グレーの3色がランダムに配置されています。座面形状はバケットタイプで、座席の前後間隔（シートピッチ）は910mmです。中間車の車端部はこれより広くなっています。

中間車は連結面に貫通扉を設置し、快速運転時の指定席車両としての用途を考慮し、貫通扉窓部分に「座席指定車」の表記が加えられました。また、全車とも側窓ロールカーテンカバー部に座席番号が表示されています。

第2編成では、シートモケットの差異に加え、戸袋窓部のカーテン省略、荷棚の変更（金網構造からパイプ構造へ）、先頭車の運転室仕切上部と各車両の連結面上部にLED式車内案内表示器を新設するなどの改良が施されています。

2010年10月には、2編成とも3000系や新幹線700系などで使われている音色のドアチャイムが設置されました。

ラッピング車両

過去には、沿線自治体の祭や花火大会をPRするヘッドマークの装着や、客用扉部へのラッピング、中吊り広告の変更などが行われました。

第2編成は、アニメ作品『ラブライブ!サンシャイン!!』のラッピング電車として運行されたことがあり、ファンからの注目を集めました。また、2023年6月からはスピンオフ作品『幻日のヨハネ -SUNSHINE in the MIRROR-』のラッピング電車『YOHANE TRAIN』として運行されています。

第1編成は、静岡県立大仁高等学校の歴史を振り返るラッピング電車や、テレビアニメ「Dr.STONE」とタイアップしたラッピング列車として運行されました。

運用の変遷

運行開始当初は主に快速列車として運用されていましたが、1998年 3月の快速廃止後は、他形式と区別されることなく普通列車として運用されています。快速廃止と同時に指定席も廃止されましたが、中間車に設置されていた「座席指定車」表記は後年まで残されていました。2008年10月までに全編成の運転台にワンマン運転対応工事が行われ、2009年 4月1日よりワンマン運転が開始されました。

編成・車歴

[編成表などの詳細な情報は省略]

もう一度検索