会所 (近世)

会所とは

「会所（かいしょ）」という言葉は、文字通りには会や催しが行われる場所を指しますが、日本の近世においては特に町方における商人組合や地域の集会所、事務所、取引所としての独立した建物を意味しました。これらの施設は、商業活動や地域社会の運営において重要な役割を果たしました。

町会における会所

町会内における「町会所」は、主に住民の集会や事務のために使われました。町役人が勤務し、町の住民に向けて奉行所からの規則や町触などを伝える役割を担っていました。また、住民が提出する届書を作成するなど、地域社会の管理に必要な事務作業もここで行われました。

都市によってその運営方法は異なり、大坂では「大坂三郷」を構成する各郷に上部機関として「惣会所」が設立されていました。一方、江戸では町名主の役宅が町会所の機能を兼任していました。江戸時代の大阪では、各町ごとに町会所が設置され、町人から選出された町年寄が町代として執務を行い、下役や夜番なども配置されていました。

夜番は夜の見回りを行い、木戸番は夜間に木戸を閉めて見守る役割を果たしました。また、垣外番は主に乞食を追い払う任務を負っており、地域の安全を保つために貢献していました。

寛政の改革以降、江戸では七分積金制度が導入され、町会所はこの積金を管理する場所となりました。町会所では、貧困層に低金利での資金貸出も行われ、地域経済の安定化に寄与しました。江戸猿屋町には特別に設けられた融資専用の会所もあり、これは札差の経済的な困難を和らげるための措置として機能していました。

町会所の管理運営は、主に勘定所御用の両替商が行い、明治維新後には1872年に解散しました。その後、東京府に移管された資産は東京営繕会議所が管理することになり、これが後に東京会議所と改称されて1876年まで存続しました。

商業における会所

商人が結成したグループや組合の事務所も「会所」として知られています。これらの会所では、業務の管理や外部との交渉、商人同士の連絡、取引に関する重要な決定が行われました。株仲間における事務所は特に「寄合所」や「通路所」とも呼ばれ、商業活動の中心地となっていました。

また、会所は金貨や銀貨の両替、商品の取引相場を定める取引所としても機能し、特に米取引所としての役割が重要でした。全国各地に設置された米会所の中でも、堂島米会所（大阪）や長崎会所などは特に有名です。これらの取引所は、当時の商業活動を支える中心的な存在でした。

広域にわたる専売制も会所の一環として考えられます。これは藩が特定の産物を管理し、直接販売するために設置した機関で、「産物会所」や「国産会所」と呼ばれました。開国後には、藩営の貿易機関として設置された「藩会所」が生まれ、これを通じて武器や器械などの入手を目的とした貿易活動も行われました。

最終的には江戸幕府も、物価高騰の原因として諸藩の専売を好意的には捉えていなかったものの、幕府自身の流通機構を半国営化する「諸色会所」構想を進めることになりますが、これは幕府の滅亡により実現には至りませんでした。

会所は日本の商業や地域社会の重要な要素であったことが、このように顕著に示されています。

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