低
アルブミン血症とは、
医学的に、
ヒトの血液中にある
血漿(けっしょう)という成分に含まれる
アルブミンの濃度が、通常の範囲を下回る状態を指します。これは、全身のたんぱく質の量が少なくなる「低蛋白血症」という状態の一つです。
アルブミンは、私たちの体内に存在する最も重要なタンパク質の一つです。特に血液中の
血清に含まれるタンパク質の約6割を占めています。
アルブミンには、体内のさまざまな物質と結合して運搬する役割があります。例えば、多くの
ホルモンや薬剤、その他の分子化合物は、血液中では
アルブミンと結びついています。これらの物質が生物学的な働きをするためには、
アルブミンから分離する必要があります。一例として、
カルシウムも
アルブミンと結合して血中を循環しており、低
アルブミン血症になると、
アルブミンと結合していない遊離の
カルシウムイオンが増加することがあります。
原因
低
アルブミン血症が発生する主な原因は、大きく分けて三つあります。一つは、体内で
アルブミンを合成する能力が低下すること。二つ目は、体外へ
アルブミンが過剰に失われてしまうこと。三つ目は、
アルブミンの材料となる栄養素が不足することです。
アルブミンは主に
肝臓で作られます。そのため、
肝臓の機能が低下する病気、例えば慢性肝炎、
肝硬変、
肝不全、あるいはウィルソン病のような疾患がある場合、
アルブミンの合成能力が低下し、低
アルブミン血症を引き起こすことがあります。
また、腎臓の働きが悪くなり、通常は体外に漏れ出ない
アルブミンが
尿と一緒に排出されてしまうことでも、血液中の
アルブミン濃度は低下します。これは、腎臓の
糸球体というフィルター機能を持つ部分に障害がある可能性を示唆しており、慢性腎臓病、糖
尿病が原因で腎臓が悪くなった糖
尿病性腎症、大量のタンパク質が
尿に出る
ネフローゼ症候群などが原因として考えられます。
さらに、食事から十分なたんぱく質を摂取できていない、慢性的な
栄養失調の状態が続くと、
アルブミンを合成するための材料が不足し、低
アルブミン血症を招く可能性があります。
症状
アルブミンには、血液中の水分を血管内に保つ働き(膠質
浸透圧の維持)があります。低
アルブミン血症になると、この膠質
浸透圧が低下するため、血管の中から水分が間質(細胞と細胞の間のスペース)へと漏れ出してしまいます。これにより、血液の量が十分に保てなくなり、体のさまざまな部分にむくみ(
浮腫)が生じることがあります。特に、重力の影響で下肢(足)にむくみが出やすく、指で押すと跡が残るような
浮腫(圧痕性
浮腫、pitting edemaと呼ばれます)が見られることが特徴です。
診断
低
アルブミン血症の診断は、
血液検査によって
血清中の
アルブミン濃度を測定することで行われます。この検査は、一般的な肝機能検査の項目に含まれていることが多く、日本で行われる健康診断などの
スクリーニング検査でもしばしば測定されます。健康な方の
血清アルブミン濃度の目安は、通常3.5 g/dL以上とされています。
治療
低
アルブミン血症の治療は、まずその根本的な原因となっている病気を特定し、その治療を行うことが最も重要です。原因疾患の改善に伴って、
アルブミン濃度も回復に向かうことが多いです。
ただし、
アルブミン濃度が非常に低く、緊急性が高いと判断される場合には、献血された血液から作られた
アルブミン製剤を点滴で血管に投与することがあります。これにより、一時的に血中の
アルブミン濃度を上げ、膠質
浸透圧を回復させて
浮腫などの症状を和らげることができます。
なお、
アルブミンなどのタンパク質は、口から摂取しても
胃や腸で消化酵素によって分解されてしまうため、薬のように経口で飲む治療法は効果がありません。治療は必ず静脈からの投与となります。