便補

便補（びんぽ・べんぽ）について

便補とは、古代から中世にかけて、中央政府の官司における経費や官人への給与を賄うために、特定の地域からの納物や雑物を活用する仕組みを指します。この制度により、指定された土地は「便補保」や「便補地」と呼ばれることがありました。

便補の背景

令制において、中央官司の経費を支える納物は、各国から徴収される庸や調が主な財源でした。また、封戸からの収入も所在国が徴収し、封主に送られていました。しかし、庸調制や封戸制が次第に衰退するにつれ、それらの負担は正税によって賄われるようになりました。この変化は、地方財政の悪化につながる結果を招きました。

11世紀に入ると、地方の国衙では、特定地域の官物や雑物の徴収権を官司や封主に付与し、国衙を経由せずに現地で納入処理できる仕組みを導入しました。これが便補制度の始まりです。最初の頃は、便補の適用地域は固定されていませんでしたが、後に官司や封主は自身の所有する私領を便補の対象に求めることができるようになりました。

便補地の指定

国衙側でも、特定地域の保や田地を便補の対象として指定することが行われました。例として、東大寺領として知られる伊賀国の黒田荘や玉滝荘は、元々東大寺が所有していた杣の周辺の出作田が、実質的に機能を失った封戸の代わりに便補地として認められたケースがあるのです。

院政期の影響

院政期に突入すると、便補の制度において、国衙領の開発や維持を条件に、官司や封主がその経営に関与することが認められるようになりました。このため便補地に指定された土地の多くは、実質的には官司や封主の私領として扱われることが増えました。このような土地は、便補保や便補地として知られています。

その後、太政官厨家や内蔵寮、大炊寮などの官司や、東大寺、伊勢神宮、北野社などの寺院が、地方の国衙から便補保や便補地の指定を受けるようになりました。

政治的変動と久遠な影響

歴史的な政治変動により、便補保や便補地が失われることもありました。しかし、多くの便補地は荘園化を果たし、「准官省符之地」として国家からの認知を受け、封主や寺院の私領として存在し続けることとなります。このように、時間とともに便補制度は荘園制の中に吸収され、時代を超えてその影響を及ぼし続けました。

このように、便補制度は古代から中世にかけての日本の制度の一環として、地方財政や土地所有の形態に大きな影響を与えました。

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