太政官厨家

太政官厨家について

太政官厨家（だいじょうかんちゅうけ）は、元来、太政官に付随する厨房を指しましたが、古代においては、この厨房を管理する官司そのものを意味しました。太政官における重要な会議や儀式で提供される食事の準備を始め、それに必要な器具や雑貨の調達を担うことが、その本来の職務でした。

太政官厨家の役割

太政官厨家の主な業務は、以下の通りです。

食事の準備: 太政官における会議や行事の際に提供される食事の準備全般を担当しました。
物資の調達: 食事の準備に必要な道具や雑貨などの物資を調達しました。
公田の管理: 食料や費用に充てるための公田（乗田）の地子を管理しました。
給与の支払い: 弁官以下の太政官の官人や雑務を行う召使への禄米や時服などの給与を支払いました。

組織と人事

『延喜式』によれば、太政官厨家の責任者である別当（べっとう）は、少納言、弁官、外記、史の中からそれぞれ1名が兼務していました。その下には、預（あずかり）として、少納言局と弁官局の史生からそれぞれ1名ずつが任命され、毎年2月に行われる太政官の列見の儀式までの1年間、交代制で職務に当たっていました。

財源

太政官厨家の財源は、主に以下の二つでした。

公田からの地子: 公田である乗田から徴収される地子は、舂米や軽貨の形で納められました。
例進納物: 諸国から集められた例進納物も、太政官厨家に納められました。

変化と変遷

しかし、時代が進むにつれて、太政官厨家の状況は変化していきました。班田制の崩壊や、位田の増加、国司による地子の正税への転用などにより、本来は班田の余剰田であった乗田や、そこから得られる地子も減少していきました。その代替として、便補保と呼ばれる一種の荘園が設けられるようになります。

当初、太政官厨家は少納言局と弁官局が共同で管理していましたが、蔵人所の設置により、少納言と少納言局の職掌が形骸化すると、弁官局が単独で管理するようになりました。さらに、残された乗田や便補保も、代々官務（左大史）を務めた小槻氏の事実上の所領となっていきました。

このように、太政官厨家は、その成立から変遷を経て、その役割と管理体制を大きく変化させていったのです。

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