俣野氏

俣野氏の歴史と末裔

俣野氏（またのうじ）は、日本の武家氏族の一つであり、股野氏とも呼ばれます。彼らは桓武平氏の鎌倉氏族に属し、その初代である俣野景久は平安時代末期の治承・寿永の乱において平朝臣側について軍事活動を行いました。景久は、彼の活動の記録において特徴的な「俣野五郎」という名前で知られています。彼は相模国の高座郡俣野邑に拠点を置き、地域の重要な武士としての役割を果たしました。

俣野の地名

俣野という地名は、現代の横浜薬科大学周辺に該当します。この地域は境川を挟んでおり、藤沢市の西俣野、横浜市の戸塚区俣野町および東俣野町にわたる広がりを持っています。歴史的には、俣野は大庭御厨の一部であり、境川はかつて「俣野川」と呼ばれていました。これらの地名は、俣野氏の居住地としての重要性を物語っています。

活躍と衰退

俣野景久は、治承・寿永の乱に際して、信頼の置ける武将として多くの戦闘に参加しました。特に石橋山の戦いでは、平朝臣の側に立ち、戦闘の最前線で活躍しましたが、最終的には信濃国飯山での敗北を受け、戦死となりました。その結果、俣野氏の今後の動向については明確な記録が存在しないことから、彼の死後すぐに氏族としての影響力が衰えていったことが推測されます。実際、鎌倉時代には俣野にあった大日堂（現在の御嶽大神）は鎌倉景正に関連しますが、彼の死後は荒廃したまま放置されていたことが『吾妻鏡』に記されています。これにより、俣野氏の没落は鎌倉時代には既に始まっていたと考えられています。

末裔の存在

俣野氏の末裔として考えられる人物には、藤沢市の清浄光寺（遊行寺）の開基である俣野五郎景平がいます。彼は宗尊親王の側近として仕えたと言われており、伝承によれば開山の他に弟である阿呑海も同じく俣野氏の人物とされていますが、具体的な史料による確認は行われていません。また、延文元年（1356年）の銘のある梵鐘には「願主沙弥給阿」という記載があり、これも俣野氏に関するものであるとされていますが、やはり詳細には伝承の範囲を超えません。

藤沢市西俣野の北部には、道場ヶ原という地名があるのですが、こちらも呑海上人に関連する道場（寺院）が存在したとされる伝承があります。また、清浄光寺の境内には俣野権現が祀られていました。

さらに、横浜市戸塚区の戸塚町には、親縁寺の開基も俣野氏に関わると伝わっており、氏族の子孫が地域に根付いていたことを示しています。

鎌倉時代末期から南北朝動乱期の文献には、「俣野彦太郎入道」と名乗る人物が登場し、彼の跡地が高階氏の庶流に与えられ、それが室町幕府重鎮である南宗継に関連しているとされています。これはおそらく景平の血縁と考えられています。

まとめ

俣野氏は平安期に活動した武士としての根強い伝統を持ちながらも、時代の流れによりその影響力を次第に失っていったことがわかります。彼らの足跡や末裔に関する伝承は、地域史の一部として今日にも伝えられており、興味深い歴史的遺産となっています。

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