傅顔

傅顔（ふ がん）

傅顔は、五胡十六国時代の前燕に仕えた人物であり、生没年は不明です。

生涯

傅顔は前燕に仕え、長楽郡太守に任じられました。地方官として善政を敷いていたと考えられます。

358年、河間郡出身の李黒が反乱を起こし、周辺の州郡を荒らし回りました。李黒は棗強県の県令である衛顔を殺害するなど、その勢いは激しさを増していました。傅顔は、この事態を鎮圧するため討伐軍を率いて李黒の討伐に向かい、これを打ち破り、李黒を討ち取ることに成功しました。

359年8月、東晋の泰山郡太守である諸葛攸が、水軍・陸軍合わせて2万の兵を率いて前燕に侵攻しました。諸葛攸は石門から侵入し、黄河の小島に駐屯。配下の匡超を碻磝に進ませ、蕭館を新柵に配置。さらに、督護の徐冏に水軍三千を与え、東西から圧力をかけました。これに対し、傅顔は輔弼将軍の慕容評と共に5万の歩兵・騎兵を率いて東阿で迎え撃ち、諸葛攸率いる東晋軍を打ち破るという大戦果を挙げました。この功績により、傅顔は右衛将軍に任じられました。

360年2月、太師の慕輿根が反乱を企てました。傅顔は秘書監の皇甫真と共に慕輿根を捕らえ、反乱を鎮圧するのに貢献しました。同年3月には、護軍将軍に任じられ、太宰の慕容恪の命により、騎兵2万を率いて河南へ進軍し、淮河に臨んでから帰還しました。この時の軍威は非常に盛んであったと伝えられています。

361年3月、慕容恪は5万の兵を率いて、野王に拠る呂護の討伐に向かいました。傅顔もこれに従軍し、野王城外に到着すると、呂護は籠城の構えを見せました。傅顔は慕容恪に対し、「呂護は各地の賊軍を寄せ集めており、東晋軍も接近しているため、兵の士気は低い状態です。今こそ速攻をかけるべきであり、そうすれば軍費を節約できます」と進言しました。しかし、慕容恪は「呂護は老獪であり、奇策を用いる可能性がある。城は容易に落とせない上に、力攻めは被害が大きい。呂護軍には兵糧の蓄えがなく、援軍も見込めないため、防備を固めて兵卒を休ませつつ、離間工作を進めるべきだ」として、長期戦を選択しました。包囲が数ヶ月に及ぶと、追い詰められた呂護は配下の張興を出撃させましたが、傅顔はこれを撃破し、張興を討ち取りました。これにより城内の士気はさらに低下し、呂護は妻子を捨てて滎陽へ逃亡。その後、降伏しました。傅顔は呂護と共に兵を率いて河陰へ赴き、勅勒を襲撃して大戦果を挙げ、帰還しました。

369年6月、東晋の大司馬である桓温が北伐を敢行すると、傅顔は迎撃に向かいましたが、林渚で朱序に敗北を喫しました。

傅顔は、前燕の武将として内乱の鎮圧や対外戦争で活躍し、前燕の勢力拡大に大きく貢献しました。

参考文献

『晋書』巻110-111
『資治通鑑』巻100-102
* 『十六国春秋』前燕録

もう一度検索