呂護(りょ ご)
呂護は、
五胡十六国時代に生きた人物で、その生涯は激動の時代を象徴しています。彼は
後趙の将軍としてキャリアをスタートさせましたが、後に
冉魏、
東晋、前燕と、所属する勢力を変えながら生き抜きました。
生涯
元々、呂護は
後趙に仕える将軍の一人でした。350年、
後趙で内乱が発生し、冉閔が皇帝を殺害して魏国(
冉魏)を建国すると、呂護は冉閔によって征虜将軍に任じられました。しかし、
351年になると、呂護は平南将軍の高崇と共に
冉魏に反旗を翻し、洛州
刺史の鄭系を捕らえ、河南郡・河内郡・河東郡の地を
東晋に帰順させました。しかし、彼はすぐに翻意し、魯口に拠っていた
後趙の旧将、王午と鄧恒を頼りました。
352年、冉閔が前燕の慕容恪に敗れて処刑されると、王午は安国王を自称して独立を宣言しました。慕容恪が魯口へ侵攻してくると、王午は籠城しましたが、配下の秦興によって殺害されました。呂護は秦興を誅殺し、王午の後を継いで安国王を自称し、魯口を統治しました。
354年、慕容恪が呂護討伐のために再び魯口へ軍を進め、城を包囲しました。呂護は籠城しましたが、1月余りで陥落してしまい、野王へ逃れました。その後、弟を鄴へ派遣して前燕に謝罪すると、慕容儁はこれを許し、呂護を河内郡太守に任じ、野王の統治を認めました。しかし、呂護はその後も二心を抱き、同じ
後趙の旧将である馮鴦と結託して
東晋と内通しました。
358年、馮鴦が前燕の攻撃を受けて呂護のいる野王へ亡命してきました。
361年、
後趙の旧将である高昌が前燕の攻撃により敗死すると、呂護はその領民を傘下に取り込むと共に、
東晋へ使者を派遣して改めて帰順の意思を伝えました。これにより
東晋朝廷より前将軍・
冀州刺史に任じられ、
東晋軍を自領へ迎え入れ、前燕の首都である鄴を急襲しようと目論みました。
しかし、呂護の計画は前燕に露見し、慕容恪率いる前燕軍が呂護討伐に向かいました。呂護は野王に籠城しましたが、数カ月に渡る包囲の末、配下の張興を突撃させたものの失敗。食糧が尽きた呂護は皇甫真の陣営へ夜襲を仕掛けましたが、これも失敗に終わりました。呂護は妻子を棄てて滎陽へ逃走し、野王は陥落しました。
361年10月、呂護は再び前燕に謝罪して帰順を請うと、慕容暐はこれを認め、広州
刺史・寧南将軍に任じました。
362年、呂護は前燕の将軍として
東晋領の洛陽攻略を命じられ、傅顔と共に河陰へ進軍しました。しかし、傅顔が途中で軍を反転させたため、呂護は単独で侵攻を続け、洛陽へ迫りました。呂護の襲来により、洛陽の守将である戴施は宛へ逃走し、陳祐は
東晋朝廷へ救援を要請しました。
東晋の救援軍が到着すると、呂護は小平津まで軍を退きましたが、流れ矢に当たって戦死しました。
呂護は、その時々の状況に応じて所属する勢力を変え、巧みに立ち回った人物でした。しかし、最終的には戦場で命を落とすという、波乱に満ちた生涯でした。
参考文献
『資治通鑑』「晋紀」巻99 - 巻101
『
十六国春秋』巻27 , 巻28