全台鉄路商務総局鉄道

全台鉄路商務総局鉄道：台湾鉄道の黎明

全台鉄路商務総局鉄道は、清朝統治下の台湾において、劉銘伝の主導によって建設された最初の鉄道路線です。この路線は、基隆から台北を経て新竹に至る区間（現在の縦貫線北段の前身）で構成され、台湾の鉄道史における重要な一歩となりました。一般的には、清朝台湾鉄路または劉銘伝鉄路とも呼ばれています。また、台湾総督府鉄道の前身であり、現在の台湾鉄路管理局の前々身にあたります。

建設の経緯

1887年、清朝の光緒帝の時代に、台湾巡撫であった劉銘伝は、中国初の旅客鉄道としてこの路線を計画しました。同年4月、劉銘伝は清朝政府の認可を得て、福建台湾省の自己資金による建設を開始しました。まず、台北市で大稲埕の開発事業に着手し、ここに台北駅を設置することにしました。軌間は現在と同じ3フィート6インチ（1,067mm）を採用し、基隆港から台北、そして新竹へと至る路線の建設が始まりました。全台鉄路商務総局の設立と起工式典が行われた6月9日は、現在台湾における鉄道の日（鉄路節）となっています。

路線と技術的な特徴

基隆市内の獅球嶺隧道は、1888年に着工し、全長235メートルのトンネルは30ヶ月の工期を経て1890年8月に完成しました。これは台湾初の鉄道トンネルであり、現存する唯一の清朝時代の鉄道トンネルです。1888年には、大稲埕から淡水河を渡る木造の鉄道橋が竣工しました。これが現在の台北大橋の前身です。同年7月18日には、台北（現在の大稻埕）から錫口（現在の松山）間が完成し、試運転が行われました。1891年10月20日には、基隆と台北間の約28.6kmが全通しました。1893年11月30日には、台北と新竹間も開業しました。しかし、開業前に劉銘伝は退官しており、邵友濂が後を継いでいます。開業式典は1894年1月23日に開催されました。

この鉄道路線は、16kgレール、再急勾配50‰、最小曲線半径100メートル（ただし局所的に75メートル）という低規格で建設されました。また、橋梁が水害によって流失することも多く、日治時代に殆どが付け替えられました。特に、台北市から桃園市に至るルートは、樹林を経由する淡水河の対岸ルートに置き換えられ、元の路線は「台北台南道路」として、現在の省道台1線旧線（台一甲線）となっています。

南部への延伸計画と未成線

当初の路線計画では、台南府城までを結ぶ予定でしたが、新竹以南は崎頂付近の築堤に着手しただけで、それ以南は着工には至らず、未成線となっています。後の日本人による調査で、新竹から崎頂まで南下する築堤の遺跡のほか、旧新竹港に至る資材運搬用貨物支線（旧港支線）の存在が明らかになっています。1895年8月30日に提出された日本人鉄道技師板倉勝文による旧線現地調査で、この支線は鉄道の開業後、廃棄され使用されなかったことが報告されています。

日本統治下の改修と新線建設

台湾が日本の統治下に入ると、この路線は接収され、まずは軍用鉄道として活用されました。しかし、橋梁の損傷やレールの低規格、設計・施行水準の低さから、日本当局は高規格化路線建設を決定し、最終的に全長106kmのうち0.8kmしか再利用されませんでした。改良事業中は、淡水河の橋が不通となり、台北 - 新竹線は橋のそばにいくつかの臨時駅を設けて分断輸送となりました。そして、島内縦貫鉄道計画が完成しましたが、台北と桃仔園（現在の桃園駅）間の経路変更は最大のものでした。海山口（現在の新北市新荘区）、亀崙嶺（現在の桃園市亀山区）は急勾配のため放棄され、日本統治開始6年後の1901年に枋橋（現在の新北市板橋区）、鶯歌石（現在の新北市鶯歌区）を経由する現在のルートが開業しました。

旧ルートのうち、大橋頭 - 打類坑間は、100年以上を経て台北捷運新荘線（大橋頭 - 迴龍）として事実上の復活を果たしました。また、水返脚付近の遺構は汐止駅付近で発見されています。桃園以南も現在の縦貫線が開通するまでは、そのままのルートで再利用されており、清朝時代にはなかった駅も設置されています。

駅一覧と車両

以下は、清朝時代に建設された駅のリストです。太字は日本統治後に増設された駅です。

車両については、清朝時代には8両の蒸気機関車を保有していました。1号機と2号機は、ドイツのホーエンツォレルン機関車製造製で、それぞれ「騰雲号」、「御風号」という愛称で呼ばれていました。日本統治後に接収され、1型蒸気機関車に改名されました。3-8号機はイギリスのホーソン・レスリー社が製造し、6-8号機には「掣電」、「超塵」、「摂景」という愛称がありました。同じく3型蒸気機関車と改名されましたが、1931年に廃車され、現存していません。

当時の人々の反応

当時の台湾の人々は、新しい科学技術に対して様々な反応を示しました。風水が乱れると忌み嫌う者もいれば、その便利さを称賛する者もいました。彰化銀行創業者の呉徳功が残した《新竹坐火輪車往台北》という詩が流行しました。この詩では、午前中に汽車に乗っているだけで新竹から台北（約80km）に到達できると謳っており、呉が鉄道の利便性を高く評価していたことがうかがえます。

関連項目

獅球嶺隧道 - 基隆市指定古蹟
亀崙嶺古道
亀崙嶺鉄道橋遺構 - 桃園市指定古蹟
清朝統治時代の台湾

以下の路線は、一部が清朝時代の路線に相当します。

中山高速公路（主に基隆 - 南港、楊梅 - 新竹間）
台湾縦貫鉄路
縦貫線 (北段)（主に八堵 - 台北、桃仔園 - 新竹間）
台北捷運新荘線（主に大橋頭 - 打類坑間）
台1線（主に打類坑 - 桃仔園、楊梅 - 新竹間）

参考資料

《台灣鐵道傳奇》，洪致文著，時報出版
桃園縣縣定古蹟 龜崙嶺鐵道橋遺構調查研究暨修復計畫，國立臺東專科學校，桃園縣政府文化局
清代鐵路分布圖
談清代台灣火車站雑誌「観察」2015年6月号
劉銘傳トンネル台湾港務公司

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