八栗寺

八栗寺：霊山に佇む歴史と信仰の聖地

香川県高松市牟礼町に位置する八栗寺は、真言宗大覚寺派に属する寺院であり、四国八十八箇所霊場の第八十五番札所として広く知られています。五剣山、観自在院という別名を持ち、聖観音菩薩を本尊として祀っています。

空海と五剣山の伝説

寺伝によれば、弘法大師（空海）が虚空蔵求聞持法を修行中に、五本の剣が天から降り、蔵王権現が現れたと伝えられています。この霊験に示された地を聖地と定め、空海は降ってきた剣を山の岩盤に埋め、丈六の大日如来像を刻んで山の鎮護としたと言われています。このことから、寺院は「五剣山」と呼ばれるようになりました。

五剣山山頂からの眺望は素晴らしく、八つの国が見えることから、かつては「八国寺」と呼ばれていた時期もあったそうです。唐からの帰朝後、空海が再び訪れた際、かつて植えた焼き栗が繁殖しているのを見て、寺名を「八栗寺」に改めたとされています。

歴史と建築

八栗寺は、天長6年（829年）の開基と伝えられていますが、天正時代の兵火で全焼しました。その後、文禄年間に無辺上人によって本堂が再建され、寛永19年（1642年）には高松藩主松平頼重によって現在の本堂が再建されました。この際に聖観音を本尊とし、「観自在院」と称するようになったとされています。宝永3年（1706年）の大地震による五剣山の東峰崩壊の影響も受けながらも、幾度かの修復を経て現在の姿が保たれています。

境内には、山門である二天門、本尊と脇仏を安置する本堂、大師堂、歓喜天堂、多宝塔、鐘楼堂など、様々な建築物が点在しています。歓喜天堂には大聖歓喜双身天王が祀られ、多宝塔には金剛界大日如来坐像が安置されています。また、境内には樹齢50年の菩提樹（シナノキ科）も存在し、かつては空海の手植えによる天然記念物の菩提樹があったと伝えられています。

霊場としての八栗寺

八栗寺は、四国八十八箇所霊場としてだけでなく、歓喜天霊場としても知られています。木食以空が東福門院から賜った、弘法大師作と伝わる歓喜天像が祀られており、「八栗の聖天さん」として信仰を集めています。

境内には、参拝者が参道を登る際に通る一ノ鳥居、二ノ鳥居、三ノ鳥居があり、賽の河原や、高松市を一望できる展望所となるお迎え大師像なども配置されています。

アクセスと周辺

八栗寺へのアクセスは、琴電志度線八栗新道駅、JR高徳線讃岐牟礼駅からバスやタクシーを利用するか、高松自動車道志度ICから車でアクセスできます。また、八栗ケーブルを利用することで、山上駅まで直接アクセスできます。

周辺には、番外霊場である洲崎寺や六萬寺、奥の院である中将坊堂、そして庵治半島の先端にある竹居観音など、多くの宗教施設があります。

まとめ

八栗寺は、歴史と自然、そして信仰が融合した魅力的な場所です。空海ゆかりの寺院として、多くの参拝者を引きつけ、霊場としての役割も担っています。美しい景観と数々の文化財、そして静寂に包まれた山間の環境は、訪れる者に深い感動を与えてくれるでしょう。ケーブルカーを利用して気軽に訪れることも可能ですので、四国を旅する際には、ぜひ訪れてみてください。

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