公慶

東大寺大仏殿再建に生涯を捧げた僧、公慶

公慶は、江戸時代前期(1648-1705)に活躍した三論宗の僧侶です。現在の奈良県生駒市出身の父と、丹後国宮津(現在の京都府北部宮津市)で生まれた彼は、幼名を七之助と称しました。その後、父とともに奈良に移り住みます。

万治3年(1660年)、公慶は東大寺大喜院に入寺し、英慶の指導の下、出家しました。当時、東大寺の大仏は、永禄10年(1567年)の東大寺大仏殿の戦いで大仏殿が焼失し、その後建てられた仮の建物も慶長15年(1610年)の台風で倒壊、雨ざらしの状態でした。

大雨の中、荒廃した大仏を目の当たりにした公慶は、その場で大仏殿の再建を誓ったと伝えられています。貞享元年(1684年)、江戸幕府の許可を得て、公慶は「一紙半銭」を合言葉に全国で勧進活動を開始しました。7年後には、1万1千両(現在の貨幣価値で約10億円に相当)もの浄財を集めることに成功します。

元禄5年(1692年)、大仏の修理が完了し、開眼法要が営まれました。この功績が認められ、翌元禄6年(1693年)、公慶は護持院隆光の尽力により、5代将軍徳川綱吉と桂昌院に紹介され、綱吉に拝謁しました。綱吉の支援も得て、大仏殿の建立へと着手します。幕府の援助を受けながら、全国的な勧進活動を継続しました。

しかし、当時の日本は、諸大名による大規模な城郭や城下町の建設、豊臣秀吉と豊臣秀頼による方広寺大仏殿の建立と再建などが相次ぎ、木材資源は枯渇していました。幕府の協力があっても良質な木材の入手は困難を極めました。そのため、公慶は大仏殿の設計を変更せざるを得ませんでした。天平時代や鎌倉時代のものと比較して、間口を11間から7間に縮小し、方広寺大仏殿で用いられた技法にならい、小材を金輪で締め上げて成形した集成材を柱に用いることで、大径材の不足に対応しました。

それでも、虹梁と呼ばれる2本の大梁には、長さ13間の無垢材が必要でした。日本中を探し回った末、宝永元年(1704年)、日向国白鳥山で2本のアカマツの巨木を発見、10万人を超える人員を動員して奈良まで運搬しました。そして、宝永2年、大仏殿の上棟式を迎えました。

しかし、公慶自身は、大仏殿の落慶を見ることなく、宝永2年(1705年)、江戸で痢病のため客死しました。遺骸は奈良へ運ばれ、東大寺の北、重源が創建した五劫院に埋葬されました。大仏殿の落慶は、公慶の死後4年後の宝永6年(1709年)のことでした。現在、東大寺に見られる大仏殿は、この時に再建されたものです。落慶法要の後には、中門、廻廊、東西楽門も再建されました。

公慶の死後、翌年には仏師性慶と公慶の弟子即念によって「公慶上人坐像」(重要文化財)が制作されました。この像は、勧進所内に建てられた御影堂に安置され、大仏殿のある東を向いて設置されています。

公慶の尽力は、東大寺大仏殿の再建という偉業に結実しました。その功績は、現在もなお、東大寺に息づいています。彼の粘り強い努力と、多くの人々の協力を得て実現した大仏殿の再建は、日本の歴史における重要な出来事の一つとして、後世に語り継がれています。

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