六時礼讃

六時礼讃（ろくじらいさん）

六時礼讃は、浄土教における法要の一つであり、主に法然を開祖とする浄土宗、時宗、浄土真宗で広く行われています。この法要では、1日を6つの時間に分け、それぞれの時間に誦経や念仏、礼拝を行います。具体的な時間の区分は日没、初夜、中夜、後夜、晨朝、日中の6つに分かれ、これに従って信者たちは恒常的に念仏三昧を実践します。

特に特徴的なのは、法要中に使用される旋律です。天台声明を基にした美しい旋律が響き渡り、後半になると高音の節が荘厳さを増していきます。これにより、参加者は心の中に深い敬虔の念を抱きながら、仏に思いを馳せることができます。

六時の意味

この「六時」という概念は、おおまかに以下のように設定されています。

1. 日没（にちもつ） - 申〜酉の刻
2. 初夜（しょや） - 戌〜亥の刻
3. 中夜（ちゅうや） / 半夜（はんや） - 子〜丑の刻
4. 後夜（ごや） - 寅〜卯の刻
5. 晨朝（じんじょう / しんちょう） - 辰〜巳の刻
6. 日中（にっちゅう） - 午〜未の刻

「四六時中」という言葉の由来に関しては、四時（早晨、午時、晡時、黄昏）と六時を合せたものだとの説があります。六時に分けた法要の形式は、浄土教に限らず、東大寺の修二会などの他の宗派でも見られる形態です。

浄土宗や時宗の中では、日中礼讃の時間において、阿弥陀如来、観音菩薩、勢至菩薩について礼讃が行われ、これを「三尊礼」と呼びます。この三尊は、信徒にとって特別な意味を持つ存在であり、彼らの信仰を深める大切な要素となっています。

歴史的背景

六時礼讃は、建久3年（1192年）に浄土宗の開祖である法然が、大和前司親盛入道の招きを受け、後白河天皇のために法要を行ったことに始まるとされています。『徒然草』第227段や『愚管抄』によると、法然の弟子・安楽坊遵西が礼讃に節を付け、これが広がることになりました。しかし当時は定まった節や拍子がない状態でした。

遵西によって作られた礼讃が大衆に支持されるようになると、既存の仏教教団からの抵抗を招きました。この背景には、建永2年（1207年）に後鳥羽上皇の女房たちが遵西の影響を受けて出家し、その結果、遵西が斬首されるという事件が関与しています。この事件は、法然自身に対する承元の法難とも関連しており、浄土教が日本において急速に広まる過程において重要な位置を占めています。

現代の実践と関連作品

現代においても、六時礼讃は浄土宗や時宗の法要において重要な役割を果たしています。歌や合唱曲など、さまざまな形式でこの法要の精神が表現されています。例えば、合唱曲「礼讃I・II」では、往生礼讃偈や礼讃文が用いられ、美しい旋律が伝承され続けています。これにより、六時礼讃は信者たちにとって心の拠り所となり、深い精神的な結びつきを育んでいるのです。

今後も、六時礼讃が持つ形而上学的な意義を理解し、それに基づく実践が受け継がれていくことを期待します。

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