兼子正

兼子正：空の英雄、その生涯

兼子正（かねこ ただし）は、1912年（明治45年）2月25日に生まれ、1942年（昭和17年）11月14日に戦没した、日本海軍の軍人です。戦闘機搭乗員として、日中戦争と太平洋戦争で活躍し、8機以上の敵機を撃墜したエースパイロットとして知られています。最終階級は海軍少佐、没後中佐に昇進しました。山形県出身で、その生涯を空に捧げました。

若き日の兼子

弁護士の父を持つ6人兄弟の三男として生まれた兼子は、日本橋区久松小学校、府立一中を経て、1933年（昭和8年）に海軍兵学校を卒業しました。府立一中では柔道部に所属し、心身を鍛錬しました。同期には板谷隆一中佐、一期先輩には鈴木實中佐がいました。

1934年（昭和9年）には、霞ヶ浦の第26期飛行学生を修了。同期には、横山保、鈴木實、進藤三郎、山下政雄などがいました。1935年（昭和10年）に海軍中尉に任官し、パイロットとしての道を歩み始めました。

日中戦争での活躍

支那事変（日中戦争）勃発時、兼子は第一航空戦隊所属の空母「龍驤」の戦闘機小隊長として出撃しました。1937年（昭和12年）8月22日、宝山方面での哨戒中、当時新鋭の95式艦上戦闘機を駆り、敵機18機編隊と交戦しました。この空戦で、兼子は単独で2機、部隊全体で6機を撃墜する大戦果を挙げ、東京朝日新聞で「空の英雄」として大々的に報道されました。翌日には同期の鈴木實も同様に多数の敵機を撃墜し、その武勇が広く知られることとなりました。9月には広東攻撃に参加し、その後、本土に帰還しました。

1938年（昭和13年）からは、基地防空や地上部隊との連携任務に就きました。その後、横須賀海軍航空隊を経て、12空分隊長として漢口に進出しますが、空戦の機会はあまりありませんでした。その後、大村空、美幌空と勤務地を転々としました。

太平洋戦争での戦い

1941年（昭和16年）9月、兼子は空母「翔鶴」に配属され、海軍大尉として太平洋戦争開戦を迎えます。12月8日の真珠湾攻撃では、第一次攻撃隊・第六制空隊長として零戦5機を率い、カネオヘ・ベローズ両飛行場を攻撃しました。その後、ラバウル、ラエ攻撃、インド洋作戦に参加し、1942年（昭和17年）4月9日のトリンコマリー攻撃では、味方零戦10機で敵機23機を撃墜するという圧倒的な戦果を上げました。

1942年5月、第6空飛行隊長に就任。6月5日のミッドウェー海戦では空母「赤城」に搭乗し、列機4機を伴い、飛行艇2機を撃墜しました。しかし、「赤城」は沈没し、兼子は救助されて本土に帰還しました。

帰還後、ミッドウェー海戦で散り散りになった艦戦・艦攻を集め、新設された空母「飛鷹」の飛行隊長に就任。部下には、阿部善次、原田要らがいました。ガダルカナル作戦では、ヘンダーソン基地への艦砲射撃などを支援しましたが、「飛鷹」は機関故障で戦線を離脱。同艦飛行隊の主力はラバウルに進出し、基地航空戦に参加することとなりました。

ガダルカナルでの最期

1942年11月1日、ブインに進出し、第三次ソロモン海戦に参戦。そして同年11月14日、ガダルカナルへの高速輸送船団の上空直衛の戦闘で戦死しました。同じく高速輸送船団の直衛にあたっていた菅波政治大尉も、同日に戦死しています。

兼子の操縦技術は特筆すべきものではなかったとされていますが、その優れた統率力は高く評価されていました。

親族

兼子一、兼子宙は兄にあたります。

まとめ

兼子正は、日中戦争から太平洋戦争初期にかけて、数々の戦いでその武勇を示した戦闘機搭乗員でした。撃墜王としての輝かしい戦果の陰で、ガダルカナルでの戦いでその生涯を終えました。彼の功績は、今もなお語り継がれています。

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