進藤三郎

進藤三郎の生涯

進藤三郎（1911年8月28日 - 2000年2月2日）は、日本の海軍軍人であり、最終階級は海軍少佐です。海軍兵学校60期生として、その軍歴をスタートさせました。

生い立ちと海軍入隊

1911年、神奈川県横須賀市で海軍機関大佐の三男として生まれた進藤は、幼少期を広島県呉市で過ごしました。父親の転勤に伴い、呉の海軍工廠で飛行機を身近に感じる環境で育ちました。広島県立第一中学校時代には喧嘩が原因で退校処分となり、その後、崇徳中学に編入。1929年に海軍兵学校に入学し、海軍軍人としての道を歩み始めました。

飛行学生から戦闘機搭乗員へ

海軍兵学校卒業後、進藤は「名取」「日向」「伊4」「呂66」といった艦艇勤務を経て、1934年に飛行学生となります。同期には横山保らがいました。大村海軍航空隊で戦闘機操縦を学び、1936年には空母「加賀」に配属され、戦闘機搭乗員としてのキャリアをスタートさせました。進藤は、衝撃を和らげるために髪を長く伸ばしていましたが、街で因縁をつけられることがあったものの、戦闘機搭乗員であることを明かすと、相手の態度が一変したというエピソードが残っています。

支那事変での活躍

1937年、支那事変が勃発すると、進藤は「加賀」から出撃し、初陣で敵偵察機を共同撃墜しました。その後、佐伯空、13空、大村空と各地の航空隊で分隊長を歴任し、1940年には漢口に進出しました。

当時、日本海軍航空隊は漢口を拠点に重慶爆撃を行っていましたが、航続距離の短い戦闘機では護衛が難しく、爆撃隊の損害が大きくなっていました。そこで進藤は、横空で受領した試作新型戦闘機、後の零式艦上戦闘機（零戦）の慣熟訓練に励みました。1940年9月、進藤率いる零戦隊は重慶攻撃に初出撃し、中国空軍の精鋭部隊と交戦。敵機27機を撃墜（中国側記録では13機）、味方の損害は1機のみという圧倒的な勝利を収めました。この功績により、進藤の部隊は感状を授与され、その活躍は日本国内でも大きく報道されました。その後、進藤は仏印ハノイの14空に転属し、援蒋ルートの破壊作戦に従事しました。

太平洋戦争と終戦

太平洋戦争が勃発すると、進藤は空母「赤城」の分隊長として真珠湾攻撃に参加。第二次攻撃隊の制空隊指揮官として35機を率いて出撃しました。しかし、帰国後に航空神経症と黄疸で入院し、戦線を離脱します。その後、徳島海軍航空隊、582空、204空の飛行隊長を歴任し、1943年には少佐に昇進。1944年には空母「龍鳳」の飛行長に就任しました。

マリアナ沖海戦では、「千歳」に乗艦して戦闘機隊を指揮しましたが、出撃した攻撃隊はほとんど帰還せず、大きな損害を受けました。その後のフィリピン沖海戦では、特攻隊の直援にあたりました。進藤は特攻作戦に反対し、上官に進言したという証言も残っています。終戦間際には筑波空飛行長を務め、紫電改部隊の練成にあたりました。終戦直後、厚木航空隊事件を起こした小園安名率いる302空の使者が、降伏の軍使を乗せた飛行機を撃墜するよう要請しましたが、進藤はこれを一蹴しました。

戦後

戦後、進藤は鉱山長を経て、1952年に広島に帰郷しました。戦時中の英雄が、戦後には戦犯扱いされるという価値観の急激な変化に苦しみ、子供たちから石を投げられることもありました。進藤自身は、「戦時中、誠心誠意働いて一生懸命戦ってきた事に悔いは無い」と語る一方で、「その事が戦後馬鹿みたいに言われてきて、つまらない人生だった」とも述べています。

その後、進藤は東洋工業（現マツダ）に入社し、ディーラーの山口マツダで整備部門の長として活躍、1979年に常務取締役で退任しました。2000年2月2日、広島市内の自宅で眠るように亡くなりました。その表情は安らかで、微笑んでいるかのようだったと言われています。


進藤三郎は、その生涯を通じて、激動の時代を生き抜いた一人の軍人でした。戦闘機搭乗員としての卓越した技術と指揮能力、そして戦後の苦悩と再生は、後世に多くの教訓と示唆を与えています。

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