冉智

冉智（ぜん ち）

冉智は、五胡十六国時代、冉魏の初代皇帝である冉閔の息子として生まれました。母親は董皇后です。冉智は、激動の時代に翻弄されながらも、父の遺志を継ぎ、自らの運命を切り開こうとしました。

生涯

350年、冉閔が後趙から独立し冉魏を建国すると、冉智は皇太子に立てられました。しかし、その道のりは決して平坦ではありませんでした。

352年、劉顕が冉魏に侵攻すると、冉閔は自ら救援に向かいました。冉智は、首都である鄴の留守を任され、大将軍蒋幹が補佐につきました。ところが、同年4月、前燕の慕容恪が冉魏討伐を開始。冉閔は廉台で敗北し、捕らえられてしまいます。

慕容評率いる前燕軍が鄴を包囲すると、冉智は蒋幹と共に徹底抗戦の構えを見せました。しかし、城外の兵は次々と降伏。兵糧攻めにより、城内は食糧が欠乏し、人肉を食らうほど困窮しました。事態を打開するため、冉智は東晋に称藩し援軍を要請しますが、東晋の思惑により、伝国璽を要求され、援軍は得られませんでした。

絶望的な状況の中、蒋幹は東晋に伝国璽を渡してしまいます。その後、蒋幹は東晋軍と共同で出撃を試みるも失敗。8月には、内応者によって城門が開かれ、前燕軍が侵入。冉智は董皇后、重臣らと共に捕らえられ、薊へ送られました。尚書令の王簡らは自害しました。

冉智は海賓侯に封じられますが、354年、前燕に対する謀反計画が密告され、慕容儁によって誅殺されました。若くして皇太子の地位につきながら、激動の時代に翻弄され、志半ばで生涯を終えた悲劇の皇太子でした。

冉智の短い生涯は、五胡十六国時代の混乱と、その中で生きた人々の苦悩を象徴していると言えるでしょう。

参考文献

『晋書』 巻107
『資治通鑑』「晋紀」巻98 - 巻99
* 『十六国春秋』「後趙録」巻2

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