冷泉氏

冷泉氏（れいぜいし）

冷泉氏は、室町時代から江戸時代にかけて存在した日本の氏族です。本姓は多々良氏で、大内氏の庶流にあたります。

概要

冷泉氏の起こりは、嘉吉年間（1441年 - 1444年）に豊前国企救郡小倉城にいたとされる冷泉五郎高祐という人物であるとされています。しかし、実際には大内弘世の庶子である弘正から数えて7代目の子孫にあたる興豊が、母方の冷泉家の家号を名乗ったのが始まりであると考えられています。

興豊の父である義豊の代に、周防国玖珂郡祖生郷（現在の山口県岩国市）に住んだとされています。天文5年（1536年）の文書には、冷泉兵庫助万盛という人物の名前が見られます。

興豊の子である隆豊は、大内義隆に仕え、安芸国守護である安芸武田氏の旧城、佐東銀山城主に任ぜられるなど、重用されました。しかし、義隆と対立を深めた陶隆房が反乱を起こし、義隆を攻めると、隆豊は義隆を守って抗戦し、討ち死にしました。

陶隆房は後に陶晴賢と名を改め、大内義長を擁立して大内氏の家政を牛耳りました。隆豊の遺児である元豊は、弟の元満と共に叔父（隆豊の弟）である吉安豊英に連れられ、安芸国人の平賀弘保のもとに匿われました。

元豊らは成人後、晴賢を討った毛利氏の家臣となり、九州攻略の武将として門司城代に任ぜられました。しかし、桂元親、赤川元吉と共に豊後守護の大友氏に攻められ、討ち死にしました。その後、冷泉氏の家督と門司城代は弟の元満が継ぎました。

元満は足利将軍家の御一家にして毛利氏の姻戚であった渋川義満の婿となり、文禄の役では朝鮮へ渡りました。帰国後の文禄3年（1594年）には出雲国仁多郡亀嵩城主に起用されるなど重用されましたが、慶長の役で再び朝鮮に渡り、蔚山城の戦いで朝鮮軍の襲撃を受け、同僚の阿曾沼元秀と共に討たれました。その後は遺児の元祥が家督を継ぎ、子孫は長州藩士となりました。

幕末期には、志士として倒幕のために国事に奔走した冷泉五郎綏豊や、幕府恭順のために倒幕派と対立し命を落とした冷泉太郎兵衛らを輩出しました。

冷泉五郎

冷泉五郎（後の冷泉綏豊）は、天保12年（1841年）に生まれました。井上小豊後の次男で、井上勝の兄にあたります。冷泉秋平の養子となり、家禄は300石で八組士を務めました。剣術を斎藤弥九郎に、砲術を江川坦庵に学びました。慶応元年（1865年）に鎮静会を組織し、幕府の長州侵攻の際は主戦派として行動しましたが、同年2月11日に幕府恭順派に殺害されました。享年25。

冷泉太郎兵衛

冷泉太郎兵衛は、文政7年（1824年）に生まれました。八組士で、先鋒隊を務めました。幕府の長州侵攻の際は恭順派に属し、慶応元年（1865年）2月11日に主戦派の香川半助らを殺害しましたが、同年6月18日に権現原事件の容疑で切腹しました。享年42。

系図

大内弘世
　 ┃
弘正
　 ┃
盛清
　 ┃
教豊
　 ┃
政豊
　 ┃
弘豊
　 ┃
義豊
　 ┃
冷泉興豊
　 ┣━━━━━┓
隆豊　　　吉安豊英
　 ┣━━┓　　┃
元豊　元満　満定
　　　　┃
　　　　元祥


歴代当主は、大内氏や毛利氏から偏諱を受けています。

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