刺客

刺客：歴史と現代の解釈

古来より、暗殺者、もしくは犯罪組織における殺害担当者を「刺客」と呼びます。英語では「ヒットマン」に相当します。読み方は本来「せっかく」ですが、現代では「しかく」や「しきゃく」が一般的です。

歴史上の刺客

中国の『史記』には「刺客列伝」があり、5人の刺客の物語が記されています。しかし、これらの刺客は、職業的な暗殺者ではなく、大義や義理のために暗殺を実行した人物たちです。中国古代の封建社会では、領地を持たない食客が、主君への恩義を果たすために、主君の敵を倒すという行為が見られました。豫譲や荊軻などがその代表例と言えるでしょう。彼らは単なる殺し屋ではなく、強い信念を持った人物として描かれています。

一方、日本の歴史においては、依頼や命令を受けて暗殺を実行した者も刺客と呼ばれました。崇峻天皇暗殺に関与した東漢駒や、源義経暗殺を企てた土佐坊昌俊、源実朝を暗殺した公暁などがその例です。幕末期の河上彦斎、岡田以蔵、中村半次郎、田中新兵衛なども著名な刺客として知られています。明治維新以降も、大久保利通暗殺の島田一郎、原敬暗殺の中岡艮一、濱口雄幸を襲撃した佐郷屋留雄などがいます。

興味深いのは、選挙において特定候補を攻撃するために擁立された候補者を「刺客」と呼ぶようになったことです。これは、旧所属政党を離党した政治家に対抗するために、有力な候補者を送り込む戦略として用いられます。この戦略は、2005年の総選挙で特に注目を集め、以降一般的に使われるようになりました。

選挙用語としての「刺客」

現代日本の政治において、「刺客」は、主に旧所属政党から離党した（または除名された）政治家に対抗するために、その旧所属政党が擁立する対立候補を指します。この対立候補は、有名人や実績のある政治家で、自らの選挙区が不安定な場合が多いです。旧所属政党は、資金や幹部による応援演説などで、刺客を強力に支援します。この用法は、2005年の総選挙で、自由民主党が郵政民営化関連法案に反対した議員に対抗するために多くの刺客を送り込んだことで広く知られるようになりました。しかし、単に相手を倒すための対抗者という意味でも用いられる場合があります。

フィクションにおける刺客

時代劇では、刺客は非常に魅力的な題材として扱われてきました。忠臣蔵の赤穂浪士を刺客として描いた『四十七人の刺客』はその代表例です。他にも、『子連れ狼』の拝一刀、『あずみ』、『るろうに剣心』（主人公のモデルに河上彦斎がいる）など、数多くのフィクション作品で、刺客が登場し、その活躍や生き様は人々の想像力を掻き立ててきました。必殺シリーズや天誅などの作品も、刺客をテーマにした作品として有名です。

まとめ

「刺客」という言葉は、歴史上様々な文脈で使用されてきました。義に殉じた者、依頼された暗殺者、そして現代政治における対抗候補まで、その意味合いは時代や状況によって変化しています。しかし、いずれの場合も、その背後には、権力闘争、信念、そして人間の生死をかけたドラマが潜んでいると言えるでしょう。 今後も「刺客」という言葉をめぐる物語は、歴史の中に、そしてフィクション作品の中で紡がれていくことでしょう。

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