劉衛辰

劉衛辰（りゅう えいしん）：鉄弗部を率いた匈奴の leader

劉衛辰は、五胡十六国時代に匈奴鉄弗部を率いた人物です。彼の生涯は、周辺国との複雑な関係と、激しい戦いに彩られています。

生い立ちと鉄弗部大人への道

劉衛辰は、匈奴鉄弗部大人の劉務桓の三男として生まれました。359年、兄の劉悉勿祈の死後、鉄弗部大人の地位を継承します。彼は周辺国との関係を構築し、勢力拡大を目指します。

代国、前秦との関係

劉衛辰は、代国（後の北魏）の拓跋什翼犍の娘を妻に迎える一方で、前秦の苻堅とも密かに内通し、左賢王に任じられます。しかし、前秦の民を略奪し奴婢として献上したことが苻堅の怒りを買い、関係が悪化。以降、代国との関係を重視するようになります。

361年には再び代国に朝貢しますが、苻堅を討つべく挙兵した際には、苻堅の派遣した鄧羌に討たれて捕らえられます。その後、苻堅は劉衛辰を夏陽公とし、その部族を統べさせますが、365年には代国に対して謀反を起こし、拓跋什翼犍に討たれて逃走するなど、その行動は一貫していません。

西単于への道

376年、劉衛辰は苻堅に、拓跋什翼犍の征伐を要請。苻堅は大司馬の苻洛を派遣し、代国に侵攻させます。代国は敗北し、拓跋什翼犍が殺害されると、苻堅は代国を東西に分割し、東部を独孤部の劉庫仁、西部を劉衛辰に統治させました。これにより劉衛辰は西単于となります。

しかし、劉庫仁が苻堅によって広武将軍に任じられ、劉衛辰より格下となると、それに怒って前秦に叛き、劉庫仁の西部を攻めます。劉庫仁に打ち破られ、妻子と部衆を奪われるなど、勢力は一時的に衰退します。

北魏との激突、そして最期

386年、北魏の拓跋珪の叔父である拓跋窟咄が劉衛辰のもとへ逃れてくると、これを殺害。北魏との関係はさらに悪化します。

その後、劉衛辰は西燕や後秦から官位を受け、勢力回復を図りますが、391年、子の劉直力鞮を派遣して北魏に侵攻させた際、拓跋珪に大敗を喫します。追撃を受けた劉衛辰は居城を捨てて逃走。392年、白塩池で部下に殺害され、その生涯を閉じました。

子孫

劉衛辰の三男である劉勃勃（赫連勃勃）は、後に夏を建国します。劉衛辰は、赫連勃勃から桓皇帝と追尊されました。

劉衛辰の人物像

劉衛辰は、周辺国の情勢を巧みに利用し、自らの勢力拡大を図った人物と言えるでしょう。しかし、その行動は一貫性に欠け、敵対関係にあった国々との関係を二転三転させた結果、最終的には北魏との戦いに敗れ、暗殺されるという悲劇的な結末を迎えました。



参考資料
* 『魏書』（帝紀第一、帝紀第二、列伝第十一、列伝第八十三）

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