鉄弗部

鉄弗部とその歴史

鉄弗部（てつふつぶ）は、中国の五胡十六国時代に活躍した匈奴の一派です。南匈奴の右賢王であった去卑を祖とし、その血脈は後の夏を建国した赫連勃勃へと繋がります。本記事では、鉄弗部の興りから衰退まで、彼らの足跡を詳細に追います。

鉄弗部の誕生

272年、南匈奴の部帥であった劉猛が暗殺されると、その混乱の中で去卑の子である誥升爰が残された部衆をまとめ上げました。これが鉄弗部の始まりです。309年に誥升爰が亡くなると、子の劉虎が後を継ぎ、部族名を「鉄弗」と改めました。この名前は、父が匈奴人、母が鮮卑人であることを意味するとされています。

拓跋部との関係

当初、鉄弗部は鮮卑の拓跋部に臣従していましたが、310年に白部が挙兵すると、これに呼応して拓跋部に対して反旗を翻します。并州刺史の劉琨が守る新興・雁門の2郡を攻撃しますが、拓跋部の援軍によって鎮圧され、劉虎は朔方へと逃れました。その後、劉虎は漢（後の前趙）の劉聡に帰順し、楼煩公に封じられます。

318年、劉虎は朔方を拠点に代国（拓跋部）の西部に侵攻しますが、代王の拓跋鬱律に大敗を喫します。この時、劉虎の従弟である劉路孤は部族を率いて代国に帰順し、拓跋鬱律の娘を娶りました。

後趙との関係

劉虎の死後、子の劉務桓が鉄弗部の大人となると、代国に帰順し、拓跋什翼犍の娘を娶りました。しかし、一方で後趙の石虎とも密かに通じ、平北将軍・左賢王・丁零単于の地位を与えられます。劉務桓の死後、弟の劉閼頭が跡を継ぎますが、代国の離間策によって部族内で内紛が発生し、最終的に代国に帰順することとなりました。

前秦との関係

劉衛辰の時代になると、鉄弗部は前秦の苻堅と密通し、左賢王に拝されます。しかし、その後、前秦の辺民を掠奪したことで苻堅の怒りを買い、関係が悪化します。その後、代国との関係を修復しますが、376年に苻堅が代国を東西に分割すると、劉衛辰は西部を統領する西単于となります。

北魏との抗争と滅亡

386年、北魏が建国されると、鉄弗部は北魏と対立を深めます。北魏の北部大人である叔孫普洛らが劉衛辰に亡命し、魏王拓跋珪の叔父である拓跋窟咄を殺害したことが、その関係をさらに悪化させました。

劉衛辰は西燕や後秦とも通じ、その勢力を拡大しようとしましたが、391年、北魏の拓跋珪によって居城である悦跋城を攻め落とされ、自身も部下に殺害されました。劉衛辰の死後、鉄弗部は衰退し、その残党は各地に離散しました。しかし、劉衛辰の三男である劉勃勃は、後に夏を建国し、鉄弗部の名を歴史に刻むこととなります。

鉄弗部の歴史は、五胡十六国時代の激動を象徴するものであり、その興亡は周辺諸国との複雑な関係によって彩られています。彼らの足跡は、北アジアの歴史を理解する上で重要な鍵となるでしょう。

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